日日平安part2

日常を思うままに語り、見たままに写真を撮ったりしています。

思い起こすと一年前は平成だ

 

大阪を生涯、離れなかったという。作家・司馬遼太郎さんである。そこでは一極集中の東京とちがい、事象を相対化して眺められる。

イデアや集めた素材を発酵させる適度な湿り気も、大阪の街と人にあるらしい。そして、幾重もの歴史の層により作品の史料も手に入りやすい・・・とも。

楽天家たちは・・・前をのみ見つめながらあるく。坂の上の青い天にもし一朶の白い雲がかがやいているとすれば、それのみをみつめて坂をのぼってゆくであろう>。

明治文明の勃興期の群像を描いた『坂の上の雲』で、司馬遼太郎さんが書かれた“あとがき”の名文である。

 

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思えばまだ一年前の4月末は平成の時代であった。新元号を目の前にして人々は浮かれていたかもしれない。

人口増と工業化が経済成長の両輪となり、日本の1人当たりGDPが世界2位になったのが平成12(2000)年だった。

そして、日本列島の人口がピークを越えたのが平成20(2008)年の1億2808万人。江戸時代の終わりからの人口成長期の到達点となった。

30年余りの間、19世紀から上り続けてきた文明の峠を越えたようでもある。また、2度の大震災があり、原発事故も忘れられることはない。

 

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平成末には、1人当たりGDPは世界26位に下がり、生産年齢人口は6割を下回ったとのこと。文明の引き潮にビクビクしながらも「良い時代だった」と世論調査では7割以上の人が答えたらしい。

2019年4月27日から10日間も暦の上で休みがつらなった。それは1948年に祝日法が施行されて以来、最長だったそうな。

「外出自粛をやめて元の生活に戻ると、その15日後に感染者数が増加に転じる可能性がある」との試算も出ている。

あれから一年後であるこのGWの風景を、いったい誰が想像できたであろうか。あの「平成」が遠い昔のように感じ始めている。