仕事をするときのモットーは
好きな作家や映画人の話から教わることはとても多い。
不安でならない時や心の弱っている時“そこ”に飛び込みたくなる、と作家の太宰治さんはある場所について書いた。そこへ行くとホッとして助けられるのである。
それは映画館。世間から切り離された真っ暗な空間にて、映しだされる物語で観衆と一緒に泣いたり笑ったり。それがなによりの救いとなる。
終戦直後の貧しい時代にも大勢の人が映画館へ詰めかけたという。映画は“優しい慰め”なのか、心の弱っている時への栄養剤だったのかもしれない。
無声映画の時代を経て、セリフの声や劇中音楽を(作品の中に)入れ込むことのできる
トーキー映画が広まる中、チャプリンは人の声を入れることにとても消極的だった。
必要最低限のセリフは声で残しても、話の重要な部分は字幕にて見ればわかるようにしていた。自ら劇中音楽も手掛けて、アカデミー作曲賞を受賞するほどだったので、音への関心は強かったという。
それでも、喜劇王がとても大切にしていたのは、言葉の違いで思いが伝わらないのを避けることだった。だからこそ(音より)動きや表情の細部にこだわった。
黒澤明さんはカラー映画が全盛になっても、白黒映画にこだわった名監督である。
『映画についての雑談』という文章では、仕事をするときのモットーにしているという言葉を紹介していた。<悪魔のように細心に、天使のように大胆に>である。
黒澤さんによる数々の名作品を鑑賞するとき、私はこの言葉を意識して楽しんでいる。
<すべては五分五分>が人生観であったというのは作家・池波正太郎さんである。大正生まれの池波さんは召集され、海軍に行っている。
生きて帰れる確率は、「よくて五分五分」と覚悟を決めていたという。また、戦後に文学賞を何度も落選したが、それでも挫折しなかったのは、「すべては五分五分」と意識していたからだったとのこと。
さて、あと少しで年が明けます。皆様、良いお年をお迎え下さい。
<(_ _)>ハハーッ