ニュースの形を欲しがる人も
日本は“世界一のBGM消費国”だという。音楽ライター・田中雄二さんに、バックグラウンド・ミュージックの歴史をまとめた著作がある。
もし、コンビニやスーパー等の店内が静寂に包まれていたら、お客さんは必要なものだけ買って、さっさといなくなってしまうかもしれない。
耳慣れた洋楽の懐メロや名曲をアレンジした演奏により、リラックスした気分を与え、その場の人へ買い物意欲を促す効果が期待されている。
とはいえ、多種の商品を扱う店舗では客の買い物意欲のターゲットを見失うと、大きな損失にもつながる。
約643万トンの食品と言われても、なかなか想像できない。平成28年度に発生した日本の“食品ロス”だという。たしか、節分で売れ残った“恵方巻き”の大量廃棄が問題になっていた。
最近は、人手不足の営業時間短縮も含め、食品ロスの問題に大手コンビニがようやく腰を上げたという。消費期限が近づいた食品の実質的な値引き販売を始めるとか。
ポイントで還元する仕組みなどで、消費者は安く買え、加盟店も廃棄コストの負担が軽くなる。また、“恵方巻き”や“クリスマスケーキ”なども予約のみに切り替えて、売上は減っても廃棄の大幅削減で今までの損失分を大きく改善しているという。
その動きは食品業界に広がりそうだ。しかし、驚くのは<コンビニなど小売業はロス全体の約1割にすぎない>ということである。
最重要箇所は各家庭と、食品メーカーや外食店なのだ。現代はテレビやネットで、ニュースはほぼリアルタイムで伝わる。その中で、食品ロスの問題としてコンビニやスーパーの名前が多く出るため、我々は肝心なところを見失うことにもなりかねない。
この春に新元号が発表され、「令和」になったことは誰もが知っていたはずだが、それでも新時代の到来を実感したかったのだろうか。
人が多く集まる主要都市で配る新聞社の号外が、(配り始めると)奪い合いになり、転倒する人も出たという。これほどの混乱はなかったようだ。
新米の新聞記者のことを、昔は“トロッコ”と呼ばれていた。記者を“汽車”に見立ててて、レールの上をトロッコも走るが汽車にはほど遠いことからつけられたのだ。
明治の日清や日露戦争で、速報の役割を担ったのが号外だったという。インターネットなどない時代、戦況を伝える号外競争が繰り広げられた。
現代でも号外発行となると、新聞記者はルーツである瓦版の血が騒ぐという。読者のニュースへの驚き、喜び、感動に直接触れられるからだ。“トロッコ”の記者たちにとっても、最高の研修になるかもしれない。アナログな新聞も捨てたものではない。
ただ気になることもある。奪い合いで貴重な号外を手に入れた読者の中には、記事に目もくれずネットオークションに出品して一儲けを企んだ方もかなりいたらしい。心が温まりかけていたところ、テレビの報道で知って急冷したのを覚えている。