過去2年で生成された90%
酔ったときの会話で、私もよく使う「すべる」という言葉。元々は芸人らの業界用語で、笑いをとろうとしたギャグがまるでうけず、気まずい空気が流れることだという。20年ほど前の若者たちが使い始めたらしいが、今の若者に使ったらすべってしまうかもしれない。
その点、この人のお話はおもしろく、(私にとって)すべることがない。武田鉄矢さんである。若い頃、容姿に悩んだ武田さんは飛び込んだ書店で『劣等感を吹っ飛ばせ』という書籍を見つけて手にとった。そして、開いた見出しのひとつを見て驚いたという。
<短足コンプレックスをバネに、どっこい生きてきた武田鉄矢>という見出しに、“劣等感を克服して堂々と生きる人”として紹介されていた。しからば・・・と、居直ることで湿っぽい感情が消えたようである。
武田さんのしゃべりには、漢字的な要素を感じることもよくあり、それが説得力になる。
昭和以前の文章には、<略毎日>などと表記されるものがあった。インターネットで調べても「略」という字は“りゃく”だけではなく、“ほぼ”とも読むそうである。同じ「ほぼ」では、“粗”も同様に使われるとか。つまり、略毎日は<ほぼ毎日>ということらしい。
「すべる」という言葉と同時期だったのか、「ほぼほぼ」という“ほぼ”の強調形もかつての若者たちに使われていた。断言を避けたいときに使う言葉だったと思う。
漢字の数は、10万を超えるともいわれる。辻や峠みたいに日本生まれなのに、漢字と呼ばれる文字もある。誰が作ったのかわかっている字は少ないが、そのほとんどが長い歴史のなかで形を整えてきたという。
<無視・称賛・非難>と表現していたのは、阪神時代の野村克也監督で、部下の操縦法なのだという。
・ダメな部下は放っておき、自然と成長するのを待つ。
・そこそこの部下は長所をほめて育てる。
・できる部下はあえて弱点を指摘し、奮起させる。
“ハラスメント”が氾濫する今の時代、相応の漢字が思い浮かばない。部下の指導でも<称賛・称賛・称賛>が妥当なのだろうか。
さて、世界中にあるデータの90%は、過去2年で生成されたと言われるほどまで、データが近年急増している。2025年には現在の10倍に当たる163ZB(ゼタバイト)ものデータ量に達するとの調査もあるそうな。ゼタバイトという単位さえ、まったく想像もできないが。
データが急増する中で、今後はAIでいかに価値を引き出せるかが重要になってくるといわれる。AIの活躍には興味も尽きないが、願わくば漢字に強いAIが出てきてくれると有り難い。(ふむ)