映画・ドラマ創りの今昔物語
<映画は芝居ではない。ドキュメンタリーである>。高倉健さんの言葉である。こころを揺さぶられる映画は意外に淡々としている演出なのではないか。『フィールド・オブ・ドリームス』や『マディソン郡の橋』等はそのような印象である。
監督としても多くの名作を演出しているクリント・イーストウッドさん。ご自身の出演作を含め(奇をてらうことなく)物語がわかりやすく進行していく。その映像表現は、ブラックボックスをクリアボックスにするように、具体的でわかりやすい。
<俳優とは、迷っている時、悩んでいるときがいい>と言ったのは山田洋次監督である。東映のヤクザ映画から転身する時期に、高倉健さんは『幸せの黄色いハンカチ』の出演依頼を受けた。映画初出演で共演を果たした武田鉄矢さんは、フォーク活動に行き詰まり、田舎に帰ろうかと思っていたところだ。
昔のスターは貫禄があったのか、年齢のわりに老けて見えた。1953年に公開された小津安二郎監督の『東京物語』に主演された笠 智衆さんは49歳であった。2013年、そのリメイクとして山田洋次監督が『東京家族』という作品のメガホンをとった。
主演された橋爪功さんの公開当時の年齢は72歳であった。新旧作品を観比べても橋爪さんの方が笠さんよりはるかに若く感じる。
『仁義なき戦い』と『アウトレイジ』でキャストの比較をしても、そのことがよくわかる。
“仁義なき”では40代、50代ですごい存在感の役者さんが多数出演。“アウト”は60代の役者さんが中心だがとても若く見える。
最近のドラマでは、さわやかな二枚目が悪役を演じて凄みを出している。放映中の『きみが心に棲みついた』では、向井 理さんが怖い。昨年同期の『奪い愛、冬』では、三浦翔平さんが狂気の演技を披露していた。おふたりとも、身長180cm台の二枚目だけに、そのギャップがとてもおもしろい。
「起承転結」で“承”がボディブローのように効いてくるドラマが大好きだ。私が恋愛ドラマに期待するのは“お笑い”。絶妙な口げんかや痴話げんかにわくわくする。
『最高の離婚』の瑛太さんと尾野真千子さん。そして、綾野剛さんと真木よう子さんのカップルが絡み、痴話げんかが繰り広げられる。落語ではないが、オチがわかっていても、何度も観たくなるドラマだ。
『最後から二番目の恋』で、小泉今日子さんと中井貴一さんの台詞バトルも楽しかった。古都・鎌倉を舞台とした45歳独身女性と50歳独身男性の恋愛青春劇で、共演者たちもすばらしい。
痴話げんかにおいて、シナリオの上手さをフルに感じたのは『結婚できない男』である。阿部寛さんと夏川結衣さんのラストのセリフで、ふたりは<キャッチボールではなくドッヂボール>をしていたことに気がつく。
「キャッチボールをしてみたい」と阿部さん。「ボールは投げましたよ」と夏川さん。