日日平安part2

日常を思うままに語り、見たままに写真を撮ったりしています。

箱書きを活用してみる

 

小説やシナリオに使われる箱書きについて書いてみたい。
私の場合、A4のコピー用紙(使用済みの裏紙でも可)をよく使っていた。まず、用紙の長辺を半分に折る。これを3回繰り返すと、折り目で8つの箱ができている。
その箱を順番に「起承承承承承転結」と名付ける。これで、8分割の構成に区切れる。(このあたりは『発想はシナリオ風に』を参照して下さい)。

ここまで準備が整ったら、それぞれの箱に集めた情報の断片を書き入れる。ただそれだけである。この断片がシナリオではドラマのエピソードやシーンにあたる。書き込む順番はクライマックスや結末からでもかまわない。(『アイデアプロセッサでブログを書くと楽しくてかんたん』にて)。

 

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昔見たことがある新聞の作成編集が、箱書きに似ていておもしろかった。まだ、活字の時代であったが、記事の中身より先に、割付(レイアウト)を行い、活字を入れる枠を先に決めていくというものであった。各スペースの文字数も先に決めておいて、あとから隙間を埋めるように記事を組み込んでいく。記事は生もののため、時間とスペースの「枷」との闘いなのであろう。今はデジタル化の恩恵で、あのときの苦労もかなり削減できていることであろう。ただ、構成は土台や骨組みの役目のため、昔も今も変わらないかもしれない。

 

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デジタルの時代になってからは、箱書きもPCでかんたんに処理できるようになっている。私はアイデアプロセッサを箱書きとして使っているが、視覚的に箱書きらしく使えるソフトもいくつか試してみた。最終的に、テキスト文書として、文章処理をするため、アイデアプロセッサが一番適していたので、今こうして使っている。
アナログ時代の産物として、KJ法のカードというものがある。このカードのデジタル版も使ってみたが、PCのモニタの大きさの範囲では無理があった。

文化人類学者の川喜田二郎さん考案のKJ法とは、データをカードに記述し、カードをグループごとにまとめ、論文等に仕上げてゆく、というものである。私が長年実施している一行メモの断片化も、この考え方に多少の影響を受けた。また、ブレーンストーミングは、仕事でよく実践して、その成果もよくわかっている。
脳の思考回路に添って浮かぶアイデアや情報は、とても新鮮で気持ちがいい。
今、こうしてデジタルのアイデアプロセッサを使い、アナログの産物である箱書きと、KJ法、そしてブレーンストーミングのひとり会議を楽しみながら、役に立っている。

 

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情報の断片に関しては、具体的であるのが望ましい。
イチロー選手や将棋の羽生さんの金言集は、とてもためになるし読んでいておもしろい。日本で活躍していたときのイチロー選手が、思うような打撃ができず悩んでいたとき、まったく平凡な二塁ゴロでアウトになった。しかし、ベンチに引き上げるイチロー選手はうれしくてニコニコしていた。

その打席で、今まで「見えなかったものが見えた」というのである。ふつうなら理解できないような話なのであるが、ものすごい説得力を感じる。そして、その打席をきっかけに、イチロー選手の快進撃が始まった。羽生さんの言うことも、「大局感を磨く」とか「直感を信じる」などと、わかりやすいことを具体的に言っている。ふつうの人が言ってもピンとこないのに、ものすごい体験の裏打ちがあればこそ、だと思う。イチロー選手や羽生さんの実体験から生まれた言葉は、単純明快な言葉だけに強い説得力がある。

 

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シナリオは小説などより、具体的で映像の浮かぶ文章が必要になる。
逆に文学的な文章がジャマになる。江戸川乱歩さんの作品では、「絶世の美女」とか「この世のものとは思われない」といった表現がよくある。そのため、映像化しにくいといわれていた。乱歩さんの映画やテレビドラマを観ても、本で読むほどの迫力を感じられなかった。かたや、乱歩さんと同系色の作品を数多く発表した横溝正史さんは、映像になりやすいようだ。たしかに、乱歩さんに比べると、具体的で現実に即した映像を感じられる。

あと、言いたいこと(テーマ)が具体的に表現できない、とあせることもよくある。
そういうときに、箱書きの発想が役に立つ。もやもやしたブラック状態なものを、クリアにできる頼もしい箱である。
ブログなどでも、件名や書き始めは具体的でよかったのに、途中から抽象的に変わってしまい、なにが言いたかったのだろう、と読者を悩ますものもありそうだ。そうならないよう、構成力と自分らしい具体的な表現を見つけることに、こころがけていくつもりである。