2位のイタリアを大幅上回り
売ろうとする製品の、悪い面にも言及することは、セールスの極意らしい。売りたい製品の良い面ばかりを強調するのではなく、あえて“少し操作をしにくいですが”や“若干お高くなっています”などのトークを混じえる。すると、顧客はセールスの正直さを感じ心を開く。
20世紀最高の劇の一つである戯曲『セールスマンの死』(アーサー・ミラー)で、主人公のセールスマンは63歳。若い頃はやり手で家族からも尊敬されていたが、歳をとり落ち目になっていく。
30代の息子たちは自立できずいがみ合い、築いた家庭は崩壊。行き場を失った主人公は悲劇的な死へと向かう。
現在の日本では65歳以上の人口が最高28.4%で、75歳以上は7人に1人だという。世界201の国のうち65歳以上の割合が最も高く、2位のイタリア(23.0%)を大幅に上回っているそうな。2025年に30.0%、40年には35.3%に上る見込みだという。
平均寿命は80歳を超え、60歳で定年退職すると20年以上の余命。第2の人生をいかに送るか。収入面でも不安があるだろう。親子関係の「8050問題」も深刻だという。長期間ひきこもる50代の子を80代になる親が支えるという現実だ。
高齢ドライバーの事故が増え、免許返納を促すケースも増えている。そのせいか、アシスト自転車に乗る高齢者をよく見かける。
<人生は自転車に乗るようなものだ。バランスを保つには、常に動き続けなければならない>。息子に宛てた手紙にアインシュタインは書いたという。
やがては高齢で自転車に乗ることも難しくなるのか。自転車に代わり、簡単に操れる乗り物が登場するかもしれないが・・・。
自動運転が現実になりつつあり、自動運転バスの実証実験も進む。実現すれば、運転手が不足した地域で高齢者の利便性は増す。そう思えるほど技術の進歩は目覚ましいが、自分が生きているうちに実現するのか不明である。
過疎地域などで、人だけでなく荷物も運ぶ「貨客混載」の事業がスタートしているという。運転手による買い物代行も可能であり、買い物弱者や高齢者への支援にもつながるのだ。
貨客混載とは、国土交通省が2017年に運送業界の担い手の確保や、過疎地域で車両や運転手を有効活用して、輸送サービスを維持するための規制緩和の一環である。
タクシーやバスの運転手が客に代わり、町で買い物をし商品を届ける“買い物代行”や客から玄米を預かり、自社で精米して届ける事業も始まっている。タクシー・バス事業とコイン精米事業に、貨物運送事業を組み合わせるというアイデアがおもしろい。
過疎地域ではタクシー稼働率が低く、手の空いている運転手が活用できる。買い物に不便を強いられている人たちも気軽に利用できるだろう。
とはいえ、国交省が発表しているタクシー運転手の平均年齢は58.7歳で、すべての産業の平均年齢(42.9歳)に比べて15歳以上も上回っているそうな。