日日平安part2

日常を思うままに語り、見たままに写真を撮ったりしています。

「~しただけなのに」で始まる

 

映画やドラマはストーリーだけでなく、“事件・事情・事実”という3大要素の絡み合いも見どころである。とくに、事実なのかと感じさせられるリアリティに興味が深い。

2018年11月公開の映画『スマホを落としただけなのに』は淡々と始まった。発端は、ヒロイン稲葉麻美の恋人がタクシー内にスマートフォンを落としたことだけなのである。

そのスマホを拾ったタクシー客の男から後日に着信があり、麻美はスマホをなくした恋人の代わりにスマホを返してもらう。待ち合わせ場所に男は現れず、預かっていた飲食店員がスマホを渡した。

そして事件が起き、物語のテンポはどんどん早くなる。拾った男は待ち受け画像の麻美に興味を持ち、(恋人の)スマホ内の情報もすべて吸い取っていたからだ。そして、狂気に満ちた惨劇へと発展していく。

今のスマホへの依存度から、絵空事のドラマとは思えず、落とすことの怖さを感じてしまう。

 

  

運転中のセールスマンがゆっくりと走る大型トレーラーを、“追い抜いただけで”とんでもない恐怖に巻き込まれる作品もある。1973年1月に日本で公開された米国映画『激突!』だ。

若き日のスティーヴン・スピルバーグ監督の出世作で、低予算ながら大ヒットした。トレーラーから執拗に追跡される恐怖は凄まじく、真に迫ってきた。

物語では一貫して大型トレーラーの運転手の顔が見えない。たしか、セールスマンが食事で立ち寄っているレストランを見つけ、トレーラーを降りる時にブーツのアップシーンがあったと思うが、それ以外ではハンドルを握る手が見えるだけ。

大型トレーラーは巨大な生き物みたいで、いつまでもセールスマンを執拗に追いかけるシーンが続く。スピルバーグ監督も“怪獣の様に考えた”とのことで、その演出は大成功である。

 

 

“仕事がないだけに”始まる名作もある。フランス映画『恐怖の報酬』(1953年公開) の舞台はベネズエラの場末の街。食い詰めた移民達が日々何もすることもなく暮らしている。

主人公のマリオ(イヴ・モンタン)に仕事が入る。街から500km先の油田で火事が起きたため、火を消し止めるためにニトログリセリンを現場までトラックで運ぶ、という石油会社からの依頼である。

安全装置のないトラックでニトロを運ぶのは命がけ。街の食い詰め者に2000ドルの報酬で運ばせることになった。4人が選ばれ2台のトラックに分かれ、500km先の目的地に向かう。

悪路が続く道中には、落石や狭路などとあらゆる障害が待ち受ける。演出として、事前に挿入されたニトログリセリンの爆破威力のシーンが活きて、観客もハラハラ・ドキドキの恐怖を味わう。

マリオの相方ジョー(シャルル・ヴァネル)は、弱腰で何かあるとすぐに逃げ出す。<そしてこの2000ドルは運転の報酬だけでなく、恐怖への報酬なのだ>と言い訳をする。見どころは(短時間で描かれる)、大金を手にして浮かれた帰路シーンにあった。