クリスマスに はしゃげた時代
まだ昭和の頃だったか、クリスマスの日に仕事で車移動していた。カーラジオのFEN(極東放送網)からクリスマスソングが延々と流れて、聴いているうちにウキウキしてきたのを今もよく憶えている。
クリスマスはイエス・キリストの誕生日ではなく、降誕(誕生)を祝うミサなのらしい。当時は一日の境目が日没。教会暦上では、12月24日(クリスマス・イヴ)の夕刻から朝までが、クリスマスと同じ日に数えられたとか。
今の若い人たちはどんなクリスマスソングを聴いているのだろうか。私たちのときは、いろいろな曲が流れていた。『クリスマス・イブ』(山下達郎さん)が定番みたいになっているけど、この曲に馴染みはない。
浜田省吾さんの『MIDNIGHT FLIGHT(ひとりぼっちのクリスマス・イブ)』やB'zの『いつかのメリークリスマス』などを聴きながら、クリスマスのイメージをふくらませた。
松任谷由実さんの『恋人がサンタクロース』も流れると楽しい。稲垣潤一さんの『クリスマスキャロルの頃には』は歌って盛り上がった。『WON'T BE LONG』(バブルガム・ブラザーズ)みたいなノリで、みんなで踊り狂った。
昔ながらのお気に入りは、『Santa Claus Is Comin' To Town(サンタが町にやって来る)』で、聴くとからだが自然に動く。ビング・クロスビーさんの『ホワイト・クリスマス』も大好きだ。それこそFENから流れると最高な曲である。
今は家でAIスピーカーからクリスマスソングを聴いている。ジャズのクリスマス、クラシックのクリスマスもいい。しかし、一番聴き入ってしまうのはキッズのクリスマスである。クリスマスだとなぜか童心に戻ってしまう。
5年前のクリスマスは、当時行きつけのスナックで盛り上がった。歌って騒いだ後、あれこれ話をしたが、メリークリスマスからの連想か、ハマ(横浜)のメリーさんの話になった。店に残った4人の全員が、メリーさんを目撃していると知っておどろいた。
白塗りのお顔と真っ白なドレス。学生の頃は何度見ても怖くてドキドキした。スーッと横から現れてくるのでよけいにビックリ。横浜育ちは私だけで、あとの3人は東京や別の市の出身だった。
さて、クリスマスの風景で思い浮かぶのは黒澤明監督である。音と映像の対位法(コントラプンクト)というのを、映画『醉いどれ天使』で試みた。悲しい場面などでは、明るい曲をわざと挿入する表現方法である。
落ちぶれた主人公が病(やまい)に苦しみながら、闇市をさすらう。その陰鬱な場面に明るい曲の『カッコウワルツ』を流した。そのことで、主人公の惨めさがより強調されるのだ。
その感性は黒澤さんの実体験から生まれたという。気が滅入ってたまらないときに、街角からクリスマスの明るい音楽が流れ、よけいに落ち込んだとのこと。
クリスマスを迎えれば本年もあと一週間。今年はまだまだ仕事が残っていて、落ち込む暇もなさそうなのである。
今週のお題「クリスマス」