日日平安part2

日常を思うままに語り、見たままに写真を撮ったりしています。

秋も日暮れて思いは津々浦々

 

ある日本人がアメリカの駅の窓口で、ニューヨーク行きの切符を買おうとした。「to New York」と言ったら2枚の切符が出てきた。駅員には“two”に聞こえたらしい。かなり昔からある“英語ネタ小話”だ。

言い直してtoを「for」にしてみると、切符は4枚になった。“four”に聞こえたようだ。その日本人はあせって「えーと、えーと」と唸れば、ご想像どおりの8枚に・・・。

英語だけでなく、日本語もなにかとむずかしい。明治初期、「東京」の呼び方やかな書きは“とうけい”、“とうきやう”などとバラバラだったらしい。日本語を作った男と称された言語学者上田万年(かずとし)さんは“とーきょー”がよいと説いたのだ。

上田さんの学生時代には、日本語の運命が揺れに揺れた。<漢字を全廃してローマ字式で>とか、<かな50字のみで書く国>にしようなどと、政治家や学者が真顔で論じ合った。

 

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上田さんはまた、書き言葉を話し言葉に近づけたいと思い、“日本中で同じ書き方になること”へと情熱を注いだ。新しいかな遣いは学校で採用されたが、森鴎外さんを旗頭に立てた復古派が、元に戻してしまう。そして、かな遣いの現代化が実現したのは、上田さんの死後である1946年のことであった。

森鴎外さんの文語体の作品は格調が高い。しかし、現代人には夏目漱石さんを始めとする言文一致の作品がたしかに読みやすい。

夏目漱石さんはロンドン滞在中、菊の展覧会に出かけた。故郷の景色が懐かしかったのか、<白菊と 黄菊と咲いて 日本かな>という俳句も詠んでいる。

この句で白が先にくるのは五七五の関係であり、序列をつけたわけではないだろう。同じく菊を賞美する中国では、黄色の菊が特別に尊ばれるようだ。中日辞典で「黄花」の第一の意味は菊になっている。

 

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この秋も雨が多い。晩秋の気温らしく肌寒さを感じることもある。梅雨にも似た秋の長雨はどう呼ぶのだろうか。調べてみると秋霖(しゅうりん)や秋黴雨(ついり)などがある。書くのも読むのもむずかしい文字だ。

古いデータで恐縮だが、「重複」をどう読むか? とのアンケートが、2003年度の「国語に関する世論調査」(文化庁)にて行われている。

結果は、本来の読みである“ちょうふく”が20%だったのに対し、“じゅうふく”と読む人は76.1%だった。

中国語辞典では、「体重」「加重」など、“重さ”を意味する語は、ジュウにあたるzhongであり、「重奏」「重婚」といった“重なる・重ねる”の場合は、チョウにあたるchongと区別されるようだ。

旧暦の9月9日は重陽節句で、こちらも“ちょう”と読む「重」のひとつになる。重陽の日には、中国・漢の時代に菊酒を飲む習俗が生まれ、日本では平安時代に菊の節句として定着した。