もたもたできぬ決済の争奪戦
9月になれば夏が過ぎ去ったという気分だが、この夏の暑さはまだ居座るかもしれない。平成最後と称されたこの夏は、日本列島が猛暑に包まれた。
思えば、昨夏とはあまりにも違いすぎた。観測記録のある1886年(明治19年)以降の最多記録に並んだ昨夏は、記録的な長雨と日照不足が続いた。
東京都心では昨年8月に、計27日間も雨が降った。野菜の価格が高騰、ビールやアイスなどの売り上げも減り、異例づくしで記録ずくめの夏であった。
連続して雨が降った日数も1~21日の21日間で、8月としては1977年の22日間に次ぐ長さ。日照時間は平年の半分しかない約84時間であった。
たった一年前のことであるが、落差が大きく何年も前の話のように思えてしまう。一年でガラリと変わることは陽気ばかりではなく、技術の世界にもいえそうだ。
昨夏の記事で、NECが電子識別技術をさらに一歩進め、点を書くだけで識別タグが作成できる、と記されていた。
今の社会では、人を特定して認証したり、商品などを識別したりする様々な方法がある。印鑑やサイン、そしてバーコード、QRコード、指紋認証等である。それが、市販のペンで直径1ミリ・メートルの点を書くだけで、バーコードのような識別タグに早変わりする仕組みを発見したと、同社の研究チームが発表。
ペンで書いた点をカメラで撮影して拡大すると、インク内の微粒子が細かな模様を描き、同じ模様にならないことに着目したという。撮影した点の画像から、コンピューターが特徴的な模様を数百か所抽出して、約1万点のデータベースから一致する点を選び出すのである。
小さな部品などにも、点を書くだけでタグ付けができる。また、指紋認証のような認証キーとしても使えるとのこと。インク1滴でタグ付けができ、コピー機では微粒子の模様まで複製ができないという。
“点の識別タグ”は数年以内の実用化を目指すというが、“キャッシュレス”に向けた決済方式の競争は本格化している。
無料通信アプリ大手「LINE」は、専用アプリを使ったQRコード決済で、店側の決済手数料を3年間無料とする普及策を始めた。そして、対応する店舗や自動販売機などを年内に100万か所まで増やす計画なのだ。
ヤフーとソフトバンクもこの秋から、(ソフトバンクの営業網を活用し)同様の取り組みを始めるという。
QRコード決済は、利用客がスマホ画面に示したQRコードを、店側がアプリなどで読み取る方法が一般的だ。また、店が掲示するQRコードを、利用客がスマホで読み取るケースもある。
登録したクレジットカードの口座などから支払われるQRコード決済では、アプリをダウンロードし、必要な情報を登録すれば利用できて初期費用が少ない。中小店舗での導入が進むだろう。
アナログでインクの点を利用したり、以前からあるQRコードの利用が広がっている。その着眼点が興味深いのである。