日日平安part2

日常を思うままに語り、見たままに写真を撮ったりしています。

ジャンルを越えた芸達者たち


<芸が身を助けるほどの不仕合(ふしあ)わせ>との古句がある。芸に身を助けてもらわねばならぬ境遇には、つらいものがある。しかし、芸があるのは(無芸の者からみれば)うらやましい。

敗戦となり、いつ自動車の生産が再開できるか。従業員をどうやって食べさせられるのか。製造装置を作り動かす芸は得意のこと。カマボコを作り売ろうか。

北海道稚内市に役に立つ者を送り、海辺の小屋で研究をさせた。“世界のトヨタ"の戦後はカマボコづくりから始まったそうだ。

昨年の昼ドラ『やすらぎの郷』では、他局が大慌てしたらしい。シニア世代に向けたそのドラマは、数々の名作脚本を手がけた倉本聰さんによるものであった。

放送開始直後、番組平均視聴率が同枠のトップになり、民放各局はその結果に度肝を抜かれた。

かつてテレビの黄金時代を支えた俳優、作家、ミュージシャンらの業界人のみ入居できる老人ホームが舞台の人間ドラマであった。

 

2221

 

出演者には石坂浩二さん、浅丘ルリ子さん、加賀まりこさん、野際陽子さん、藤竜也さん、風吹ジュンさん、八千草薫さんらの豪華キャストが名を連ねた。若手では、施設内のバーで働く可愛らしいバーテン役の松岡茉優さんもいた。

シニアを対象にした昼ドラマが、ここまで視聴者のハートをわしづかみした要因は、脚本と役者さんたちの“味と芸"だった。舞台の老人ホームは往年のテレビや映画の業界みたいで、元大スターたちの人間味で数々のエピソードが際立たされた。

歌舞伎ファンの中で、「後見」の芸を評価できる人は通だといわれる。役者の陰で衣装の早変わりを助けたり、小道具を受け渡したりする役目が後見で、黒衣(くろご)ともいわれる。

古今亭志ん朝さんは生前、口癖のように語った。<血は一代限りだよ>。父・志ん生さんの破天荒に対し、正統派の江戸前落語を磨き上げた人だ。その名人芸は、七光りを“恵み"ではなく“十字架"として背負った。

 

2222

 

犯罪・捜査のIT化が進む中、「見当たり捜査」という手法が警察にある。指名手配犯の写真を頼りに、刑事が駅前や繁華街を歩き逮捕を目指すものだ。

まずは、数多くの容疑者の目や鼻の特徴を覚えねばならない。“呼び込み"といわれる作業では、拡大鏡でターゲットの写真をなめるように見つめ話しかける。相手を心に刻みつけ、友のような存在にするために。

顔認証の力を極限まで磨く鍛錬で、300人超を取り押さえたという刑事もいる。

警察による身元不明者や犯罪被害者の情報提供を呼びかける場合、似顔絵が使われることもある。指名手配する際の写真が得られないときや、整形手術で顔形を変える可能性がある場合も似顔絵が効果的。

担当する捜査官は似顔絵捜査官と呼ばれる。似顔絵は顔の特徴を強調するため、写真やビデオ画像よりも犯人の記憶を思い起こしやすく、逮捕に繋がりやすい。

コンピュータやAI(人工知能)より、人の“芸"が勝るのはとても頼もしい。