やることはバンカラなNHK
下駄を鳴らして奴がくる 腰に手ぬぐいぶら下げて・・・♪
43年前にかまやつひろしさんが歌ったヒット曲『我が良き友よ』である。作詞・作曲は吉田拓郎さん。歌詞の中にもあるが、往年のバンカラ学生を描いている。ただし、歌われた時代には、そういう学生を見かけることはほとんどなかった、と記憶している。
『デカンショ節』は学生歌としても親しまれた盆踊り歌で、バンカラによく似合う。囃(はや)し言葉のデカンショは、デカルト、カント、ショーペンハウアーなる3人の哲学者の名前を縮めたという説がある。
バンカラ(蛮殻、蛮カラ)の言葉は、ハイカラ(西洋風の身なりや生活様式)のもじり言語らしく、(明治期に)粗野や野蛮をハイカラに対するアンチテーゼとして創られた。
バンカラな学生はそれなりにカッコいいが、こちらのバンカラは“野蛮な発想”としかいいようがない。
NHKが、テレビ番組を放送と同時に、そのままインターネットで流す「同時配信」の準備をしているとか。
自らの収入の確保を優先させる姿勢で、ネット利用者にもテレビ受信料と同程度の負担を求める腹積もりのようだ。同時配信を急ぐ背景には、スマートフォンで動画を楽しむ若い世代のテレビ離れ現象も要因らしい。
一昨年開局したインターネット放送局「アベマTV」は、スマートフォンアプリのダウンロード数が今年の5月で累計3000万を突破したという。収支の現状は赤字が続いているようだが、必要な先行投資と考えているという。
スマホに最適化したテレビ放送を提供し、ニュース、ドラマ、スポーツなど20チャンネル以上ある。画面を横にスワイプして、チャンネルをサクサク切り替える。番組表の確認もワンタッチで使い勝手がよい。
私は小さなスマホ画面が苦手なので、アマゾンの“Fire TV Stick”をテレビに挿して、大画面で配信ドラマや映画、ネット動画サイトなどを楽しんでいる。
デジタル化はテレビ新時代の幕開けのはずだった。皮肉にも、デジタル化完了の年にテレビの退潮が始まり、デジアナ変換終了の1年後にネット配信のサービスが支持を広げた。
1日あたりのメディア接触時間比率で、ハイティーン、20代、30代の若者は、携帯電話がテレビを上回り、テレビの接触時間比率が急減した。
NHKがテレビ番組を放送と同時にインターネット配信することを、(NHKとは一蓮托生の)総務省は容認する方向だとか。視聴環境の変化に対応することを理由にしているが、テレビが無いのにインターネットの環境さえあれば、支払いの義務が発生するかもしれないのだ。
今や、テレビが無くても生活は成り立つが、インターネットが無いと生活が成り立たない人が増えている。勝手に配信しておいて「金を払え」となれば、横暴としか言いようがない。
視聴者の要望を、(送り手である)国営...もとい、公共放送局は、なにも理解していないようなのである。