日日平安part2

日常を思うままに語り、見たままに写真を撮ったりしています。

面白いのは人間のエピソード

 

知らない人たちがそばにいると、人間の本能は彼らに対して“友好的か、それとも敵対的に”振る舞うべきかを決めるため、その人たちを調べにかかるという。

そのように、人が人を見出すのも人類の歴史であるようだ。

噺(はなし)家の仲間どうしでは「きんちゃん」という隠語があるらしい。寄席にお金を運んでくれる客である。反応がにぶい客は「せこきん」と呼ばれ、つまらないことにも大笑いするのは「あまきん」なのだ。

「ようこそお越し下さいました」と謝意を示しつつ、高座にいながらにしてお客を選別して、じっと反応をうかがう。

 

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なにかで読んだ記憶がある。あるメーカーの採用担当者も、わざとらしい知ったかぶりを「あまきん」、勉強不足は「せこきん」と(応募者のことを)呼んでいるとか。その中で、実業界のプロの目がさがすのはただひとつ。<一緒に働きたくなる若者>なのだという。

ヤクルト、日本ハムの強打者として活躍した稲葉篤紀さんは、大学(法政大)時代で6本しか本塁打がない。その中、明大戦で放った2試合連続アーチを、当時ヤクルト監督の野村克也さんが偶然に見ていた。野村さんは息子の克則さんがいる明大側の応援にきていた。

プロでは無理、と強く反対するスカウトを押し切り、野村さんが稲葉さんをドラフトで指名した。その選手が2000本安打の名選手に育つことになるからおもしろい。

えにしの糸とは不思議なものである。

劇作家・菊田一夫さんは帰京する飛行機を待つ時間つぶしで、3分間にも満たぬ観劇をした。下積み暮らしの森光子さんが大阪の劇場で脇役を演じていた。菊田さんの目に留まった森光子さんは、女優として世に出るきっかけとなった。

 

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時代に見出され、混乱期に突出する人物も登場する。

吉田茂さんが東久邇内閣で外相のとき、GHQ(連合国軍総司令部)へ陳情に出向いた。何百万トンもの食料を緊急に輸入してもらわないと、この冬に餓死者が続出することになる。政府の統計数字をもとに訴えた。

春になったが、餓死者などは出なかった。マッカーサーは吉田さんに「数字がデタラメだ」と怒った。<いやァ、わが国の統計がそんなに正確なら、あんな戦争は始めてませんし、始めたとしても負けていませんよ>。何食わぬ顔で吉田さんは言った。

現在、口をへの字に曲げて国会ではいつも居眠りしているあの大臣が、こんなにすばらしい人物の孫とは、いまだに信じ難い。