日日平安part2

日常を思うままに語り、見たままに写真を撮ったりしています。

件名の13文字秘話が面白い

 

数多くのヒット曲を持つ小椋佳さんは、自作曲のほとんどに自分でタイトルをつけていないと語っていた。レコード会社などの関係者の方たちが、(小椋さんの作品の)タイトルを決めるらしい。

小椋さんの『少しは私に愛をください』という作品には、昔から興味があった。初期作品なので、この曲のタイトル付けはご自身かどうかわからないが、<タイトル・歌詞・曲>のすべてがラブソングなのに、実際は別の気持ちで作られたらしい。
当時、小椋さんが勤めていた銀行の合併話が元で、上層部の人に対して、「一行員の目線で、一生懸命に働く自分たちに対して冷たくしないで」という切なる想いで作った作品らしい。

さて、シンガーソングライターの方たちの作品には、内容もさることながらユニークなタイトルが際立っていた。岡林信康さんは『チューリップのアップリケ』、『手紙』で、部落問題をモチーフに書いていた。『私たちの望むものは』、『自由への長い旅』などのタイトルを見たときは、神様と言われた所以(ゆえん)はこれなのかと感じた。
井上陽水さんが作る楽曲のタイトルもおもしろい。『傘がない』、『感謝知らずの女』、『人生が二度あれば』、『限りない欲望』などの題名が連なるアルバムを初めて見たとき、いったいどんな楽曲が収まっているのだろう、と考えこんでしまった。

 

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1995年、テレビプロデューサー・白井博さんは、『日曜日は世界にイソーロー』という新番組を準備していた。そして、その番組の出演依頼の手紙を、高倉健さんに書いた。番組司会には、徳光和夫さんを予定した。

高倉健さんがポルトガルの田舎に1週間ホームステイして、『それではここで問題です』とクイズを出す>という企画である。残念ながら健さんからは、毛筆で丁寧なお断りの手紙が届き、出演は実現しなかった。

結局、その年は阪神淡路大震災で、家を失った方が大勢いる中、「イソーロー」というタイトルはふさわしくないということでボツに。
しかし、その番組はタイトルを変えることにより蘇(よみがえ)った。
その名は『世界ウルルン滞在記』で、12年間にわたる人気番組になったのだ。

 

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インターネットにアクセスするとき、玄関口となるウェブサイトのことを、ポータルサイトというらしい。『Yahoo!』や『livedoor』などである。
それぞれのポータルサイトの中央部には、ニューストピックスが位置づけられている。

『Yahoo!』では、80社程度の情報提供元があり、毎日2500~3000本ぐらいの記事が送られてくる。世の中の関心の高いものをピックアップし、リンクを活用することで、記事だけではなくその内容がより深くわかるような紹介をしている。
それは、“読ませる”というより“見せる”という意識だとか。

そのためにはタイトルがとても重要になる。『Yahoo! JAPAN』のトピックスの文字数は最大13文字(正確には13.5文字)。長すぎず短すぎない丁度良い文字数になっている。過去には、11文字から15文字に変更され、現在は13.5文字で落ち着いているそうだ。
タイトルに限らず、「人が一度に知覚できる範囲は9~13文字程度」といわれている。

 

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13文字という制約があるというのはおもしろい。
制約のある場合とない場合を比較してみると勉強になる。
新聞記事の「割付」なども、記事内容以前に<文字数が先にありき>である。

私も試しに13文字のタイトルで遊んでいるが、はじめ字余りか字足らずになっても
こねくり回していると13文字で収まるから不思議である。

タイトルは顔だとよく言われる。人間の初対面の印象みたいにも思えてくる。
全体像の7%、時間にして7秒で第一印象が決まる。
タイトルは、(玄関が開くかどうかの)“飛び込み営業トーク”にも似ている。ドアフォン越しでも、<簡潔で分かりやすくこなれた営業トーク>を取得すると、成功率は上がる。

 

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読み物のタイトルがおもしろそうだと「どんな作品や記事なんだろう、読んでみたいな」という気分にさせられる。しかし、内容がおもしろいのにタイトルが平凡では確実に損をしてしまう。タイトルも重要な「オリジナル」の要素ということの意識も必要だろう。

だれでも読んでもらいたいと思い書く。中身がいいと自信を持っても、タイトルが目立たず読まれないと元も子もない。
読者目線で惹かれるタイトルに出会うと、やはり印象が強い。それが、いつも楽しみに読ませていただいている方のものであれば、タイトルを見る段階でワクワクしてくる。

タイトルと内容のギャップがあってもおもしろい場合がある。タイトルと違う視点での内容でウケてしまうことがある。
しかし、奇をてらったタイトルで内容がおもしろくないと“一発屋”に思えてしまう。
釣りタイトルだと感じたらそれだけで読む気が失せる。

逆に残念なのは、せっかくいい内容を書いているのに、釣りタイトルにハマった書き方をした場合、読者からの読み損じが起きることもある。
タイトルが本文よりもむずかしく感じることがあるのも、一瞬でいろいろな判断をされてしまうからだろう。