とんちんかんなニュースの裏にある真実とは
65~74歳が「前期高齢者」、75歳以上は「後期高齢者」。これらの名称は、2008年から使われている。私の知る範囲で、この呼び名を歓迎している方はいない。当然のことである。
「後期高齢者医療制度」がスタートしてすぐ、「私たちは後期高齢者なんだってさ・・」と自嘲気味につぶやいていた母親の顔が浮かぶ。その3年後には母も他界した。なんの関連もないであろうが、「後期高齢」という呼び名には不吉なものを感じる。
先日、田村憲久厚生労働相が、「前期」を「若年高齢者」、後期を「熟年高齢者」とするアイデアを挙げた。とてもいい話だと思った。高齢者でなくてもうれしくなる。
その矢先に、ジャマをするが如く反対発言をする者がいた。麻生副総理兼財務大臣である。
その言い草があきれる。「言葉の遊びに興味はない。昔は偉い方を老中と言ったのであって、若年と言い換えたからって、私の感性には響かない」と。
この人の感性などは関係ないであろう。いやな思いをしている高齢者の方たちの感性に、どう響くかが問題なのだから。
2008年、麻生さんは首相就任直後から誤読や失言を繰り返し、内閣支持率は何度か20%を切るまで落ち込んだ。党内の「麻生降ろし」を抑えて衆院解散にこぎつけ、民主党に惨敗して政権を明け渡した。
自民党は1955年の結党以来、初めて衆院の第1党から転落したのだ。
総理大臣に就任した年にスタートした、新しい医療制度の「後期高齢」というネーミングに、どれほどの愛着があるのかは知らぬが、“一事が万事”という言葉もある。足元をすくわれぬようご用心願いたい。
別の話では、大阪府警の犯罪件数不正報告事件に興味をもった。
警察庁に報告した刑法犯の認知件数を、2008~12年の5年間で計8万1307件も少なくしていたと発表。
全65署が関与しており、府警は、内規などに基づいて、幹部を含む280人の処分を決めたらしいが、その処分内容に不正はないのだろうか。すべてにおいて勘繰りたくなってしまう。
大阪府の街頭犯罪の認知件数は、 統計を始めた2000年からずっと全国最悪だった。
過少報告が始まった08年は、悲願の汚名返上に向け、大半の署に街頭犯罪の専門班を設けるなど、府警が取り組みを強化した時期だった。
なにはともあれ、不正の効果により、都道府県別の街頭犯罪の認知件数で、全国ワースト1位が続いた大阪府は2010~12年、東京都を下回ったとされた。
過少報告の約65%は街頭犯罪であり、その中で自転車盗難が半分以上を占め、車上狙いや部品狙いなどが続いた。すぐに自転車が見つかったときは省いたり、連続発生した車上狙いを1件に数えたりしていた。
警察官は、街頭犯罪を少なくみせかけようとしたり、引き継ぎで独自の計上ルールを踏襲したりしたという。上司が指示した場合もあった。
見事な不正の連携プレーである。
しかし、それらの過少分を反映すると、2010~12年、大阪府の街頭犯罪の認知件数(実数)は、東京都と入れ替わり1位に逆戻りである。
2010年にワースト1位返上を発表した際、府警は「行政や民間団体との協力が功を奏した」と対策の成果を強調した。
大阪府は2013年も最悪で、ワースト1位は一度も返上していないことになる。
ここで興味ある点は、内部告発からの発覚なのかどうか。
もちろん全65署が一致団結して行ったことなのだろう。そのときの不正のためのミーティングや会議の風景は、どういうものであったのか。
各警察署はむろんのこと、府警全体の会議も行われたのかどうか。昼には豪華な弁当が振る舞われたり、夜には決起大会と称して、盛大な酒盛りが行われたかもしれぬ。
まるで営業キャンペーンのように“不正スローガン”を掲げ、キャンペーン期間もしっかり決めて、各署で不正件数を競い合う。そして一斉にスタートをしたのであろう。