日日平安part2

日常を思うままに語り、見たままに写真を撮ったりしています。

仏に入れる魂は挨拶で始まる

 

立春後の寒さを余寒というらしいが、寒が明けてもなお残る寒さだ。
2月という月は暦の上で春ながら、冬がきわまる時期なのか。それでも寒さの底から、何かが兆し始めるときでもある。

政治家志望だった武者小路実篤さんが文学に目を向けたのは、10代のときの失恋がきっかけだったという。お相手は3歳年下で商家の娘さん。失恋した実篤さんは、その気持ちを10年近く引きずり、短編小説『初恋』を著した。思いは実らずとも、人の内面を成長させ、創作への原動力ともなる。

結婚情報サービス企業が新成人に調査したところ、人を好きになった経験が一度もないという者は5人に1人。交際相手がほしい人は、(16年前の90%から)63%に減ったという。バレンタインデーの、自分チョコ友チョコの流行は若者の“恋愛離れ”の影響なのか定かではないが、このままでは日本の文学、人口減、本命チョコの行方が気にかかる。

 

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梅の真骨頂といえば、陽気に誘われるのではなく、寒さに向かって咲くところだろうか。
神社で合格祈願の絵馬が鈴なりになる時期、寒さの中で、<梅に願をかけて合格したら“桜咲く”では梅に申し訳ない>などとよくいわれる。

しかし、手柄を誇らぬのが梅の美徳である。艶やかな桜と対称的に梅には“凜(りん)”の一字がよく似合うようだ。

挨拶の“挨”の字には、<身をすりよせて押す>という意味があり、“拶”も、<近づいて身をすりよせる>ことを意味するのだという。

私の身の周りだけかもしれないが、くねくねと小さな字を書く子どもや学生が多い。挨拶もなかったり、できても小さな声の人もいる。それはいい歳をした大人にもいえる

童謡『サッちゃん』の作詞者である阪田寛夫さんには、『挨拶の下手な人に』という詩がある。<挨拶とは押し合いへし合いのことだった>と。

 

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細やかな機内サービスを楽しみに、空の便を利用する方も多いだろう。
数年前、<機内での苦情は一切受け付けません>との乗客向けのペーパーが話題になったことがある。スカイマークが以前からの接客方針を文書にしたものなのだという。

その上で、<ご不満は消費生活センターに>と呼びかけて反発を招いたらしい。
それぞれのセンターは税金で運営される公的機関である。消費者庁も容認できないとしたようだ。

雪の時期、押しくらまんじゅうをするように互いを温め合うニホンザルは、挨拶も上手であるらしい。野生のニホンザルが交わす挨拶行動には、地域差があるそうな。

宮城県金華山島のサルは雌同士が出会うと、対面で抱き合い相手の体を前後に揺さぶる。
鹿児島県屋久島のサルは背中や側面からも抱きつき、体を揺さぶることはない。
地域や群れにそれぞれ定着した挨拶の文化があるのだろう。挨拶のコツをサルたちに教わりたい心境である。

 

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施設の規模に合わせて、車いす用駐車場の設置を義務づけるなど、高齢者や障害者が安心して使える建物づくりを目指し、10年前に生まれた法律が“ハートビル法”である。

ある大手ビジネスホテルチェーン企業では、基準を満たした設計でいったんホテルを建て、車いす用の駐車場や障害者用の客室をあとでこっそり取り払う、という不正改造が次々と発覚した。その不正改造は全国で60件以上にのぼる。

その手口は昨年、世界中を驚かせた「フォルクスワーゲン・排ガス不正問題」さながらである。基準に合う施設をつくっても<仏つくって魂入れず>では困るだろう。それを、仏まで取り払ってしまったのでは、魂の入れようもなくなってしまう。

10年を経て、その企業が用意してくれる部屋は、「安心・快適・清潔なお部屋」(ホームページから)なのだそうだ。昨秋、うちの隣駅前にも、その企業のビジネスホテルが新築されたばかりである。後学のために一泊してみるのもいいかもしれない。
どのような挨拶で迎えてくれて、魂はどこに置かれているのだろうか。

 

 

今週のお題「バレンタインデー」