尾花の簪
浴衣のきみは 尾花(すすき)の簪(かんざし)~♪
吉田拓郎さん若かりし頃のヒット作『旅の宿』(1972年発売)の出だしである。熱燗徳利の首をつまんで~♪ と続く。そして、もういっぱいいかがなんて みょうに色っぽいね ♪ となる。
さて当時の時代検証として、まずは、団塊世代と呼ばれる方から少し上の世代の方たちが若者のメインであったはず。当時の若者カップルたちが熱燗徳利でいっぱいやるというイメージがどうもわかない。まあ、そのあとの歌詞にある、「ああ風流だなんて」、「俳句でもひねって」、「上弦の月」などのフレーズをみると、意図的に懐古趣味を強調していたのかもしれないが。
気になることといえば、すすきのかんざしなるものが実在したのかどうかである。
歌詞の内容からして秋の旅のようである。すすきは手に入るであろうが、かんざしにしてみた人はいるのであろうか。すすきは髪に飾るには大きすぎ、手折って髪に、というのも無理がありそうなのである。
2年前のラジオで、拓郎さんがおもしろいことを言っていた。
『旅の宿』を歌詞どおりのイメージで長年歌っていたが、少し前に作詞の岡本おさみさんから、「実話であることを聞いた」とのこと。
岡本さんご自身の新婚旅行(だったか?)の体験だそうである。岡本さんといえば、まじめそうなお顔で、いつもなにかをだまって観察して、考え込むようなイメージが強い。およそ、旅の宿で、彼女と仲睦まじく茶目っ気のある時間を過ごすということが、想像しにくいお方なのである。
それを知ってから、拓郎さんは「『旅の宿』がとても歌いにくくなった」とおっしゃっていた。