日日平安part2

日常を思うままに語り、見たままに写真を撮ったりしています。

常識はずれで制する巧みな技

 

“オープナー”なる野球の戦法を最近知った。リリーフ起用される投手が先発登板して1、2回の短いイニングを投げたのち、本来の先発投手をロングリリーフとして継投する変則の投手リレーだ。2018年のMLBで、タンパベイ・レイズが先発投手の足らない状況を補うために編み出した苦肉の策らしい。

剛速球のリリーフ投手が、初回に当たる上位打順の強力な打者と対戦。上位打線を抑えれば、本来の先発投手は打力の落ちる下位打線から始められる。上位打線との対戦を減らすことで被打率を低く抑える可能性が高まるからだ。

オープナーの採用後、レイズは平均防御率が減少。チームの最終成績は90勝72敗と大きく勝ち越した。

 

 

岡田彰布監督時代、阪神のJFKもすごかった。(J)ジェフ・ウィリアムスさん、(F)藤川球児さん、(K)久保田智之さんの3人のリリーフ投手の組み合わせをセットで使い、前半のリード点を確実に“モノにする戦法”である。

JFKの誕生は球界の革命ともいわれた。2005年に阪神はリーグ優勝したが、6回までにリードしている場合の勝率は9割を越えた。そして、JFKの3人が揃って登板した場合の勝率は実に8割を占めたのだ。2005年のチーム奪三振数は1208で、当時の日本記録1126個を大きく上回った。

今もMLBのシフト守備は画期的であるが、日本で半世紀以上前にすごい光景があった。広島の白石勝巳監督(当時)が1964年頃に考案した王シフトである。合理主義者の白石さんは巨人との戦いで、ON砲のどちらかだけでも抑えたいと思案した。

そして、直感力に長けた長嶋さんより、王さんの方が対策を見出しやすいのでは・・・と。王さんの打球が極端に右方向に多いのを試合中に感じてデータ分析させた。デビュー戦以来の全打席の打球方向を集計すると、7割がセンターから右方向だった。それならば、守備位置を右に寄せればいいとの結論を得た。

 

 

王さんが流し打ちをしてきたらどうするか。自軍のコーチ陣から異論が出た。しかし、監督には確信があった。

一本足打法はタイミングが命。もし流し打ちをしたらバッティングフォームを崩す。修正するには時間が掛かる。王さんは絶対に引っ張ってくるはず。白石さんは王さんの自尊心を見抜いていたのだ。

一塁手を一塁線へ、二塁手をより一塁側へ、遊撃手は二遊間へ。そして、三塁手は遊撃手の守備位置へ、外野手はそれぞれ右方向へと移動する。フィールドの右半分に野手が6人という極端なシフトが完成した。

思えば王さんの“一本足打法”と、イチローさんの“振り子打法”も常識はずれの産物であった。どちらも、打撃のタイミングをつかむための練習用の打法であった。公式戦で使ってはみても、当時の監督から直すように何度も命じられた。

王さんとイチローさんは拒否を続けた。それがあったからこそ、世界記録を更新する活躍へと導かれることになるのである。