師走に口ずさむ歌は何だろう
赤と緑のクリスマスカラーに華やぐ街。
(ずっと以前の)今ごろは、自らの1年と共に、この1年で流行った曲は何か? と振り返りたくなった。しかし、(頭に浮かび)口ずさめる歌が見当たらなくなって久しい。
かつてのように、街のどこに出かけても聴こえてきて、世代を問わず多くの人が口ずさめるヒット曲がなくなっている。
今やCDの存在感も薄れ、ネット配信や動画配信など、幅広いチャンネルで音楽が楽しめる時代だ。リスナーの趣向も多様化し、世代ごとやジャンルそれぞれに一定のファンがいても、幅広い年代が横つながりで親しめる曲はない。
師走に流れる曲を見知らぬ酔客どうしが合唱していた時代、音楽業界にはヒット曲の仕掛人なる人たちが裏側で活躍していたという。
以前、音楽機関誌のコラムに、レコード各社の「レジェンド」たちが登場されていた。
当事者だけに含蓄が深く、実績に裏打ちされた説得力にあふれている。
人気歌手から音楽プロデューサーになった飯田久彦さんは、『スター誕生!』に出場したピンク・レディーを発掘した。フォーク志向だった2人の女性を、歌って踊れる女性デュオに大変身させ、ヒット曲を連発。その要因は、ザ・ピーナッツの引退で、どうしても再現したいとの思いからだった。
日本初の女性ディレクターだった武田京子さんは、若手トップ女優の吉永小百合さんを担当し、橋幸夫さんとのデュエット曲『いつでも夢を』を実現した。
浅沼正人(Johnny)さんは大きなヒットに恵まれず、歌手の契約終了の交渉に出向いた帰り際、ある歌を聴いて感動した。そして、その奇跡の一曲『トイレの神様』(植村花菜さん)が世に出るきっかけとなった。
ヒットを支えた人たちに共通するものは<「決してあきらめない」、「これまでにないものをつくりたい」、「いいものはいい」>との思いを貫く姿勢である。
口ずさめる歌が見つからなくとも、クリスマスはやってきた。
「切無刀(せつむとう)」という言葉を最近知った。
なんのことやら? と調べたら、僧侶の世界での数字の符丁らしい。
「切」の「刀」がなくて七になる。
ちなみに一は「大無人(だいむじん)」。大から人をなくすとたしかに一である。
同様に、二が「天無人(てんむじん)」で、天から人を取るからだ。
「数え日」という季語はちょうど今の時期に当てはまるとか。
今年もあといく日と、指折り数えるほど暮れが押し詰まる。
クリスマスが過ぎれば、まっしぐらに仕事納めから大みそかへと急ぐ。
去りゆく時を惜しむのなら、「切無刀」式で数えてみるのもよさそうだ。
指折り数えてみたら、今年も残すところ「切無刀」の7日になっている。