志の糸を継ぐ心持つロボット
かつて、テレビ・映画で大活躍した二代目桂小金治さんが前座のとき、毎日稽古に通ったのが柳家小三治(のちの五代目小さん)さんの自宅であった。終戦まもなく、食糧難のころだ。
小三治さんは、弟子でもない若者に噺(はなし)を教え、終わると白いご飯を食べさせてくれた。小金治さんは毎回の銀シャリが楽しみだった。
ある日、いつものように満腹になって帰る途中で忘れ物に気づいて戻ると、小三治夫妻が子供と昼飯を食べていた。それはサツマイモだった。
胸をつかれた小金治さんは、帰りの電車で泣いたという。
稽古に通うのをやめようと思い、師匠の桂小文治さんに相談した。
師匠は言った。「大バカやな、お前は。小三治はお前に落語を教えているんやないで。落語ちゅうもんを、この世に残しているんやないか」と。
伝統芸能や伝統文化は、数知れない人々が、“志”の細く長い糸をつないでここまできたようだ。
ロボットと違い人間は、感情を持つ。その感情は脳内のホルモンに左右され、ホルモンの量は五感から得る情報などによって増減する。
とはいえ近年は、人工知能(AI)も進歩し、機械が感情を表現したり、人間の喜怒哀楽を理解したりする技術が登場している。
“働くだけのロボット”も「友人や家族の一員になるロボット」へ、との日が近くなっているようだ。
暗い場所にいると、脳に“ノルアドレナリン”というホルモンが放出されるらしい。そして、「不安」の感情が生まれる。
東京大・光吉特任講師は、楽しい時や不安な時などに、脳でどのようなホルモンが増減し影響するか、感情のホルモンを数値化したという。
そして、「大好き」、「悔しい」など感情を表す言葉を、単語223語に整理して「喜び」、「安心」、「怒り」、などの大きな感情の中に区分した。
その結果、ホルモンの分泌と細かい感情の関係を円で図示した「感情マップ」が出来上がったのである
一昨年にソフトバンクが販売を始めたペッパーくんは、“感情マップ”がベースになる「感情生成エンジン」を搭載し、(感情を持たせた)ロボットなのだという。
身長約120センチ・メートル、体重約30キロ・グラムの感情認識パーソナルロボットなのだ。知識や言語能力は小学校低学年、感情は生後3~6か月の赤ちゃんと同程度とか。
映像や声などで周囲の情報を受け、人間の感情を左右する“ドーパミン”や“セロトニン”などに当たる8種類の仮想ホルモンを数値化し、その組み合わせで複雑な感情が生まれる仕組みになる。
初対面の人には“人見知り”して、自分に優しくする人や機械に冷淡な人などを徐々に覚えていく。会話する相手によって「喜び」や「不安」などの感情を持ち、話や動作を変化させていくというからおもしろい。
店頭での呼び込みや商品説明で、売上に貢献しているケースもある。
幼児にも人気で、ハグされて身動きがとれずバンザイしてお手上げ状態らしい。
我々も、ぜひ学びたい接客術なのである。