日日平安part2

日常を思うままに語り、見たままに写真を撮ったりしています。

日本相撲協会に“物言い”を申す

 

2010年、横綱白鵬は5回優勝している。全勝が4回と14勝1敗が1回。
その中で63連勝という記録も達成している。大活躍の年であったが、5月頃から明るみに出た大相撲野球賭博問題で、史上初のNHK生中継が中止となり、表彰式も優勝旗と賞状のみとなった。この場所でも、白鵬は15勝全勝で優勝している。

相撲協会の危機をひとり背負うように、誠心誠意で不祥事を詫びる白鵬の姿が忘れられない。こころより相撲の復活を必死で願っていた。
それに比べ、協会の運営側には気持ちが感じられず、通り一遍の弁明など“焼け石に水”であった。

人はリアクションでわかるというが、白鵬の立派な謝罪を見ていて、<日本人の汚辱>のようなものを感じた。ほとんど日本人力士や親方がしでかした不始末なのに、あの責任感には頭が下がった。事態はそのまま収束せず、翌年の2011年3月場所は、その前月に発覚した八百長事件などを受け、戦後初めて本場所を中止した。

 

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2013年初場所白鵬はなんとしてでも優勝したかった。しかし、果たせなかった。
師と仰ぐ大鵬が、この場所の7日目に亡くなった。ぜひとも優勝を報告したかった。
その次の3月場所は、全勝で優勝を飾った。

表彰後のインタビューで、大鵬のことを語り「本当は初場所でやりたかったのですが」と言いながら、館内の観客に呼びかけ黙祷(もくとう)を行った。
偉大なる先輩へ対する真摯(しんし)な気持ちが伝わってきた。

こういうことも本来は、協会側で行わなければならないことなのではないだろうか。
そこまで気が利かない協会の運営にはあきれかえる。それも、白鵬ができなくて悔しい想いをした初場所の千秋楽あたりが最適だったのではないか。

 

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2014年5月場所で、2場所ぶり29度目の優勝を決定した白鵬に異変を感じた。
表彰後のインタビューで、いつものような(相手に対する)やさしさがないように感じた。
「32回目の優勝まであと少しですね?」との問いに、しばらく無言で「そういうのは頭で考えないようにしている」というようなことを小声で、ムッとしたように応えた。

そして、恒例の優勝会見を拒否したりと、今までの白鵬から考えられない行動であった。
報道陣となにかわだかまりでもできたのであろうか。朝青龍の二の舞にだけはならないでほしい。心配であった。

しばらくして白鵬は、自身の公式ブログで明かした。
場所中に、夫人が第4子を流産していたということであった。

「本来なら、優勝した翌日の会見に出なければならないが、もし会見に出たら、おそらくお腹の中の子供のことも聞かれるであろうと考え、(妻のことを思うと)事実を発表するには早すぎて、しかし嘘をつくことも胸が痛みました」と釈明した。

夫人を想う白鵬のやさしい気持ちに、こころ打たれた。

 

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2014年11月場所。白鵬大鵬の優勝記録32回に並んだ。43年ぶりの快挙である。
白鵬は素朴で情に厚く、こころが優しい。古き良き時代の日本人のようであり、大鵬を師と仰ぐ気持ちも熱かった。

今の日本人力士たちは、大鵬など名力士たちのことをどれくらい知っているのだろう。白鵬は、iPadに<往年の名横綱ばかりの取組み動画を入れて、よく観ている>とテレビで言っていた。双葉山のこともすごく詳しい。

この大偉業を達成してすぐに、白鵬の土俵での態度を問題視する声があがり始めている。
やくみつるさんやスポーツジャーナリストの方などが言い始めたような気もするが、この方たちは、独自の視線でいつも語っているから、とくには気にならない。人にはいろいろな考え方があるのだから。

日本相撲協会横綱審議委員会も14年11月24日の定例会合で、 “ダメ押し”や“懸賞金の受け取り方”について「委員から『態度が悪い』と批判が出た」などと、記者会見で話しているらしい。こちらの方はとても気になる。不祥事のあとに孤軍奮闘でがんばってきた名横綱が、一気に不良横綱扱いになっているのだから。

 

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白鵬は50年に1人出るかわからない大横綱になっていて、大相撲界への貢献はだれが見てもわかるはず。。八百長騒動や賭博で人気がガタ落ちした大相撲をここまで復活させたのも白鵬人気であり、横綱になってから一度も休場がない。

白鵬は元横綱朝青龍と比べられ、真面目、優等生。日本のこともよく勉強している「名横綱」などと讃えられていた。角界を支えてきたスーパースターである。そのことはだれよりも協会の運営陣がわかっているはずである。かつて、小錦大関の頃、日本人なら横綱になれる文句なしの成績をあげていたのに、横綱になれず問題になったことがある。

その後、外人横綱は誕生しているが、小錦が強すぎるため横綱にしない意図のようなものが感じられた。今回の白鵬についても、そういう差別感みたいなものがなければいいが。

この11月場所で、問題になった“ダメ押し”の取組みは、私もテレビで観ていた。
照ノ富士相手に、白鵬も勢いあまって土俵の外へ出た。動きがすぐに止まらず、背中をポンと叩くような程度に見えた。全力疾走の100m走ではゴールでピタリと止まれるわけがない。真剣勝負の取組みも同じことではないか。もっと言えば、力士出身の協会の者なら、現役時代を思い起こせばいい。我々よりそのことがわかるはずだ。

勝ち名乗りで懸賞金を受け取るとき、白鵬は勝って「よっしゃー!」との気持ちでそうなるのだと理解している。格闘技なのだから、礼儀作法だけではなく、闘志の表現もあった方がおもしろいではないか。

日本人横綱の不在が長い。協会の人間が<日本人はだらしない>と言っていた。
外国人力士が増えたといっても、日本人力士の数が勝るだろう。上位にはモンゴル人が多いとわかっているのに、なぜ若手指導に「モンゴル相撲」を導入しないのか。モンゴル相撲の基本は<相手のバランスを崩し合う戦い>と訊いたことがある。少年の頃から草原で裸馬を乗り回した者なら「モンゴル相撲」には有利だ。そして、ルールのちがう日本の相撲に当て嵌めてもそれが活きている。だから、3横綱がモンゴル人なのだ。

「日本人は“ハングリーガッツ”がないからだめ」と精神論を説いているよりも、もっと、理にかなった具体的な指導ができるよう、協会側にこそ<勉強が必要>なのではないか。