日日平安part2

日常を思うままに語り、見たままに写真を撮ったりしています。

みじかびを楽しく働くサイズ

 

1969年に放送された万年筆のテレビCMがウケにウケた。
<みじかびのきゃぷりきとればすぎちょびれすぎかきすらのはっぱふみふみ>。

用意された台本がつまらないから、即興で詠んだ歌だという。
大橋巨泉さんである。短歌のあとにはひと言、「わかるネ」・・・と。

文具会社の担当者は(収録した)台本版と即興版の両方を持ち帰った。

「台本版を選ぶような会社なら、つぶれるよ」。
巨泉さんは周囲にそう語ったらしい。

歌人岡井隆さん編集による歌集『現代百人一首』には、寺山修司さん、俵万智さんなど100人のなかに大橋巨泉さんの名前もある。

 

1889

 

“レジャー”は高度成長時代の流行語らしい。本来の英語は「ひま」という意味だという。
つまり、日本人が勝手に“遊びの要素”を潜り込ませたらしい。
朝の電車の混雑が和らぎ始めた。学校で夏休みが始まったのだろう。

動物の生息密度や行動範囲と体の大きさには一定の関係があるそうな。
生物学者・本川達雄さんの計算では、満員電車の人口密度に合うのは蚊の大きさ程度だという。

小さい動物ほど狭い場所でギュウギュウと暮らし、大きい動物ほど遠くまで移動する。
<虫かごみたいな電車に揺られ ゾウのサイズの距離を行く>。
本川さんは『東京は悲しいところ』との歌を作った。

「人間のサイズに合わない生活から溢れるのものは何なのか」。
探してみるのもいいだろう。

 

1890


10年前に79歳で亡くなった臨床心理学者・河合隼雄さんは、美しい花を見ると、こころのなかで花に語りかけたという。
「あんた、花してはりますの? わて、河合してまんねん」。

“わて”という存在が、(一度しかない人生の中で)河合隼雄という壮大な劇を演じる役者、なのだという。

人は誰でも透明の仮面をつけ、「・・・してまんねん」の人生を生きている。
そして、“いい人”と見られることに疲れたり、“明るい者”の看板が重荷になったりもする。
楽屋に戻れば、役者はヘトヘトだろう。

テレビの黄金期を常に第一線で生き抜き、名司会者として親しまれた大橋巨泉さんもしかり。それでも、“みじかび”の人生を誰よりも楽しく働き、そして真剣に遊んだ人なのだ。