日日平安part2

日常を思うままに語り、見たままに写真を撮ったりしています。

4Kデジタル・リマスター版

 

<哲学が束になってかかろうとも、タバコにまさるものはあるまい>。
モリエールの戯曲『ドン・ジュアン』の一節だという。

1904年(明治37年)の7月に、タバコの専売法が施行された。
本居宣長の歌にある「敷島の大和ごころを人問わば朝日ににおう山ざくら花・・・」。
から「敷島」「大和」「朝日」の官製たばこが登場したらしい。

専売制度が廃止された現在も価格は財務相の認可事項で、嫌煙傾向をいいことに種別ごとの値上げは続く。

人さまの顔色をうかがいながら煙の行方に神経を遣う愛煙家たちも、健康に悪いと言われ肩身が狭い。そのうえ懐にも響くばかりである。

(愛煙家たちにとって)古き良き時代の映画やテレビドラマには、喫煙シーンがふんだんに盛り込まれていた。

 

1871

 

くわえタバコがよく似合い、カッコよかった役者といえば石原裕次郎さんである。
当時の若者たちも、裕次郎さんになりきって くわえタバコを真似したはずだ。

映画『陽のあたる坂道』では、カレーライスをかき混ぜて頬張るシーンがあった。
その食べ方も若者たちに大流行した、と訊いた。

今年で没後30年。早いものだ。
先日、裕次郎さんの代表作が数本、テレビで放映されていた。
それらのタイトルに「4Kデジタル・リマスター版」と銘打たれていたが、録画したまま観ていないのでとても楽しみである。

昨年、松竹映像センターで小津映画のデジタル修復に取り組む五十嵐真さんの記事を読んだ。小津安二郎監督作品をはじめ、松竹の名作をデジタル技術で修復するプロジェクトを担当されているという。

昨年2月のベルリン国際映画祭では、小津監督の『麦秋』を高精細な4K技術で修復して出品した。そして、「60年も昔の映画とは思えないほど美しく新鮮」と高い評価を得たそうだ。

 

1872

 

五十嵐さんは、2005年からデジタル技術による修復に本格的に取り組んだ。
今の技術は古い映画の画面のざらつきやノイズも全て排除できるが、やり過ぎると当時の映画の情緒を壊してしまうとのこと。

<見やすさか、作品の歴史的価値か>。技術の進歩ゆえの葛藤は世界共通の悩みらしい。

米ハリウッドのスタジオで『インディ・ジョーンズ』を修復した際は、ジョージ・ルーカスさん、スティーブン・スピルバーグさんも監修のために訪れたという。

ルーカスさんは革新的な技術を好むが、スピルバーグさんは古い質感を重視するため、
2人が一緒だと仕事はなかなか進まないようだ。

修復する時も、監督の意図を知る当時のスタッフに監修を依頼する。
映画にはワンカットずつ狙いがあり、五十嵐さんは当時の製作者と現代の技術者の橋渡し役になりたい、と語っておられた。

かつての名作が新技術できれいに蘇るのはうれしいが、技術の発達した今は後世に残る名作がどれだけ生まれているのか。アナログ時代の名ドラマの再放送を観るたびいつも思うことだが、今では見られない配役やおもしろい話が満載なのである。アナログ画質は今より劣るはずだが、それもまったく気にならず作品に没頭してしまう。