日日平安part2

日常を思うままに語り、見たままに写真を撮ったりしています。

ツタヤ図書館の報道に物申す

 

特定の事で、複数の意見が対立する中、特定の立場からの主張を否定か肯定する意図をもち、(直接的または間接的な)情報操作を行うという報道を“偏向報道”という。

ツタヤ図書館での迷走報道には、なにか腑に落ちないものを感じる。
<百聞は一見にしかず、百見は体験にしかず>で、直に接してみればあんなむずかしい議論にはならないだろう。

新しい試みに対する批判や問題視はどこにもあるが、悪い面だけをピックアップさせる記事はいかがなものか。

何年も行っていなかった図書館が、リニューアルで居心地のいい空間を演出してくれているため、1週間のうちに2度も出かけた。新しいシステムがおもしろいのだ。

電子書籍で読みかけの作品も、図書館で紙の本を手に続きを読む。借りずに続きはまた電子書籍で愉しめばいい。今までは本を借りるだけの場所だったが、憩いの場であり、紙の本とふれあう場へと変貌している。

元々、(小さな海老名市の)小さな図書館だった。それが見違えるように蘇っただけの話。蔵書もそれほど多くはなく、隣接する他市の図書館も併用して使っていた。どこへも車で30分もかからない位置なので苦にならない。

 

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ツタヤ図書館の第1号が佐賀県武雄市にオープンしたのは、2013年のことである。
5メートル近い書棚にぎっしり詰まった本。カフェを併設した吹き抜けの館内には、ジャズやクラシックが流れる。その年の年間来館者は改装前の3倍以上のになったという。人口5万人の武雄市に92万3千人が訪れ、14年度も80万人を超えた。

雑誌をめくりながらゆったりコーヒーを楽しむ来館者たち。週末は1日4千人も来るという。従来の公立図書館と違い、レンタル大手“ツタヤ”を展開するCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)が指定管理者として運営を行う。

全国だれでも本を借りることができ、宅配便(500円)で返却もできる。開架の本を2倍の20万冊に増やし、休館日もなくした。図書館部分の延べ床面積も改装後1.4倍に広がった。市の試算で、(同じサービスを提供した場合)年間の見込み運営費は2億1千万円。しかし、CCCに書籍の販売などを認めることで、指定管理料が1億1千万円にとどまったという。

 

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市外からの訪問も多く、武雄市は食事や土産など年間の経済効果を約20億円とはじいた。それでも、新しい図書館の形に疑問を感じる市民はいる。直営図書館に戻すことを求める市民団体の言い分は、<書棚も見栄えはいいが、高すぎて本が取れない。商業的な発想が前面に出ている>とのこと。

また開館直前に市が買い足した約1万冊の蔵書リストについて、市民が情報開示請求したところ、すべて中古本だったことが判明したという。

当時CCCと出資関係のあった古本業者から購入したもので、<在庫本の押しつけでは>との批判もあがった。そして<貴重な郷土資料などが蔵書からなくなる>との不安の声も出た。市の説明では<予算の関係や、オープンが迫った不規則な中で選んだため>とのことであった。

 

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2014年4月には、愛知県小牧市が新図書館の計画を発表し、同年の8月にCCCを連携事業者に選んだ。図書館の老朽化と蔵書スペース不足が目立つため、新しい図書館に建て替える必要があった。

再開発も進まず活気もない中心市街地に“ツタヤ図書館”を建てることで、人が集まり活性化するとの目論見だった。延べ床面積を約2.6倍、建設費は約42億円。収容冊数を2倍強に増やし、書店やカフェを併設。3年後の開設をめざしていた。

こちらでも、市民の反対意見が出て、住民投票をとるまでに話が発展していった。
2015年10月4日に行われた結果は、反対3万2352票、賛成2万4981票。
CCCと連携する計画は、一時停止に追い込まれた。

小牧市民が“ツタヤ図書館”に反対した理由として、“選書に不安”、“利益優先?”
そして、“税金の無駄づかい”等が出た。

高額な建設費に対する批判に関しては、第2号の海老名市図書館の改装工費(10億円)に比べ、4倍余りの予算が大きなネックだったようにも想定される。海老名市は外観そのままでのリニューアルで、小牧市よりかなり安くすんだ。

 

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私が、海老名市立中央図書館のリニューアル工事のことを知ったのは、今年4月半ばのことであった。同敷地内にある海老名文化会館大ホールのコンサートに出かけ、そのときに<ツタヤと市が手を組み新しい図書館になる>ということも訊いた。

なんで市の図書館にツタヤが介入? との疑問と興味が湧いた。ツタヤと市の図書館の組み合わせが理解できず、いったいどんな図書館が出来上がるのか。そのときに私の好奇心が膨れた。

図書館の工事中、市では車での移動図書館や小学校などの施設を利用して、図書館の代用へとの工夫をこらしていた。熱心な利用者が楽しみに集まっているのを、(長年、図書館離れしている)私はなつかし想いで見ていた。

私は自治体の関係者でもないし、ツタヤさんの利用も今はまったくない。ただ、本の好きな人たちの楽しそうな姿をみるのが大好きなのである。かつては、<大の本好き>だったからなのだ。

最近、市長や市議員の方たちをお見掛けする機会がよくある。あのすばらしい図書館のために尽力された方かと思えば、ふしぎに親近感がわく。なんの変哲もない小さな図書館だった。そこには古い本がたくさん並んでいた。今は、きれいな館内に変わっているが、古い本はそのままだ。館内との違和感を感じつつも、手に取ると古い頃の図書館が浮かぶ。

そういえば、<CCCと図書館流通センターによる共同事業体>に批判的な報道では、
この図書館にて<海外の風俗店を案内する不適切な本が開設後に見つかった>と、鬼の首をとったように報じられていたが、利用者はあっけらかんとしたものである。地元の人間にその話を振っても、たんなる笑い話の次元なのだ。とにかく、その現場の雰囲気を感じてから、あるがままに報道してもらいたいものである。