生真面目なるサラリーマンは
昭和の時代を思い浮かべると、あくせく働くサラリーマンがいる。
その家庭風景は、家にモノが増えるよろこびに満ちていた。
電化製品、家具、すしの出前や車。どれも新しいモノばかりで新鮮だ。
高価で手が届かないはずの車や、カラーテレビ、パソコンも、いつの間にか天上からわが家に降りていた。
1978年(昭和53年)9月26日に東芝が発表した、世界初の日本語ワードプロセッサJW-10の価格は630万円。重さは220kgもあった。その機能は、今のスマホの足元にも及ばないはず。
<日本に この生まじめな 蟻の顔>と詠んだのは、俳人・加藤楸邨さんである。
アリからイメージするのは律義な働き者であり、作者の日本人観であった。
何気なく使うふだんの言葉には、歴史の重みの潜むものがある。
「感謝感激、雨あられ」は、日露戦争が題材であり、筑前琵琶の一節で「乱射乱撃・・・」のもじり。「この際だから」は、関東大震災直後の流行語だという。
アリの大敵はアリジゴクである。
砂地にすり鉢状の巣を掘って潜み、落ちてくるところを捕食する。
巣は砂が崩れないぎりぎりの角度に作られていて、アリが脚を踏み入れると崩れるのだ。
大災害、不況、戦争の連鎖・・・。あとを絶たない。
なにかが起きれば、アリジゴクの穴へ脚をかんたんに踏み入れる。
そのキッカケはもろいもの・・・なのだろう。