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日日平安part2

日常を思うままに語り、見たままに写真を撮ったりしています。

月と深層海流の間で保たれる大切なものとは

自然・動植物・宇宙

 

米国のアポロ11号で人類が初めて月に降り立ち、月面からの中継映像を見ることができたのは1969年の7月。45年も前のことである。コンピュータが故障した時のためにと、Pickett社の“計算尺”を司令船に搭載したそうである。

世界初のポータブル関数電卓HP-35(ヒューレット・パッカード社)が発売されたのは、アポロ計画末期の1972年なので、当時は計算尺がいちばん適していたためという。
それにしても<計算尺を積んで人類初の月面着陸・帰還をなしとげた>という事実に驚く。

さて、遠く38万キロメートルも離れた、その月のおかげで<私たちはこうして暮らしていける>そうな。科学の世界の話なのである。

まずは、地球の海についてふれてみよう。
黒潮。これは、日本の南岸を流れる世界最強の海流だ。このタイプの海流は、地球規模で吹く風により引きおこされ、海面近くの浅い部分を流れている。
風が原因のため、「風成循環」や「表層循環」とよばれたりする。

「循環」というのは、地球規模でめぐる海水の流れのことで、赤道の北側には西向きに流れる北赤道海流があり、それが北に向きを変えて黒潮につながる。
その黒潮は房総半島のあたりで広い海原に出ていき、太平洋をめぐりまた戻ってくる。
その循環の部分ごとに、北赤道海流や黒潮との、(海流の)名前がついている。

 

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その中で、ひとつのタイプの海流が深層海流だ。黒潮などの表層の海流が風で生まれるのに対し、海水の重さの違いで生まれる。海水は、塩分が濃く、水温が低いほど重い。水面近くにこのような重い水があれば、その水は沈んでいく。沈み込むのは、北大西洋の北部や南極周辺の海域。水深数千メートルに達して世界をめぐる。

沈んだこの流れは、北太平洋やインド洋で上昇して海表付近に現れる。それが大西洋に流れて、また沈み込む。ひとめぐりする時間は、なんと1000年から2000年くらいだという。めぐる距離、それに要する時間をみても、まさに壮大な流れである。

このような海流を、水温や塩分に注目して「熱塩循環」とよんだり、深い流れのため「深層循環」とよぶ。ただし、超大規模なこの海水の流れは、海の深い深層だけを流れているのではない。大西洋の浅い部分をこの循環は北向きに流れている。

この流れが北極圏に近づくと、冷やされて重くなって沈み込み、向きを南に変えて深層を進む。ここからは、やがてまた海表付近へ浮上するまで深層の旅となる。

地球に届く太陽のエネルギーは、赤道などの低緯度で多く、北極や南極に近い高緯度では少ない。ほうっておくと、赤道付近は猛烈に暑く、高緯度は非常に寒くなる。

北大西洋で海面近くを北上する深層循環は、赤道近くからやってくるため温かい。
集中した強い流れではないが、規模が大きいため運んでくる熱量も多い。この熱で高緯度の大気を暖める。つまり、低緯度から熱を奪い、それを高緯度に運ぶ。こうして寒暖の差がならされる。つまり、深層循環には、地球の気候をおだやかに調和する働きがあるのだ。

 

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米国地球流体力学研究所グループが1988年に発表した論文では、太陽から受けるエネルギーがおなじでも、深層循環が弱いと北半球の気温がぐっと下がるというコンピュータの計算結果がある。深層循環の強弱で地球の気候ががらりと変わるという。

約1万1千年前、ヤンガードリアス期とよばれ、北半球が突然、寒冷化したことがあった。このとき深層循環が弱まっていたとみられ、それが地球の気候を大きく左右した。それは確からしいが、深層循環についての疑問が残されており。なにが深層循環を動かしているのか現代の科学でもまだはっきりしていない。

沈み込むときは、問題がない。海表付近の流れが北大西洋を北上していけば、冷やされて重くなる。そして沈み込むのだが、問題は浮上するときだ。浮き上がるには、深層を流れていた水が軽くならないといけない。塩分が薄まるとは考えにくいので、なにかからエネルギーをもらって温かくなっているはずだ。そのエネルギー源はいったいなにか。

 

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そこで登場するのが月である。月がつくる潮の満ち引き。その「潮汐(ちょうせき)」こそが、深層循環にエネルギーを与えているという考え方だ。地球と月には、引力が働いている。月の引力は“地球の海”にも働く。そのため、月に近い側の海は盛りあがる。

月は地球のまわりを回っている。それは、地球が月のまわりを回っているということでもある。海の水には遠心力が働き、月と反対側の海も盛りあがって海面がラグビーボールのような形になる。海岸では1日に1~2回、潮の満ち引きが起きる。“潮汐”が海の水全体を揺らす。このとき、水が海底の山にあたり流れに乱れが生まれる。陸で山に風があたると風下に乱気流ができるのとおなじだ。この乱れた流れを「乱流」という。

乱流には、いろいろなものを混ぜ合わせる効果がある。コーヒーに砂糖を入れても、砂糖は底に沈んで、全体が甘くならない。スプーンでかき混ぜて乱流をつくると、すぐに全体が甘くなる。
同様に、乱流は海をかき混ぜ、海の深いところを流れる深層循環に、浅いところから熱を運んでくる。すると、深い部分の水温があがる。水温があがれば、水は軽くなって浮上する。

 

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たとえば、太平洋で乱流ができやすいのは西側の半分。海底に山谷が多いため、潮汐の流れが海底の山にぶつかると、海洋内部に特殊な波が生まれ、それが遠くに伝わって乱流をつくりだす。

論文では、このように直接できる乱流のほかに、海洋内部の波によるこの乱流を計算に入れると、観測でわかっている深層循環の姿にかなり似てくるという。
しかし、<月がなければ深層循環が生まれないことは確かだが、南極周辺の風も関係しているようで、まだ詳細ははっきりしない>とのこと。

月によって地球の海がゆすられ、そのときに発生する乱流が、海の浅い部分の熱を深海に運び込んで深層海流を温める。その結果、海流は浮上し、世界をめぐる深層循環ができあがる。
おかげで、地球の気候はおだやかで、我々もこのように暮らしていける。
このようなシナリオまでには追いつけたようだが、“深層循環”だけに、<深い深層...もとい、真相>にはまだたどり着けていないのである。

それではおあとがよろしいようで。<(_ _)>ハハーッ

 

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