日日平安part2

日常を思うままに語り、見たままに写真を撮ったりしています。

今だからこそイチロー選手にエールを送り見守っていきたい

 

田中将大投手は白星デビューを飾り、メジャーでの活躍が期待される。これからは、ケガの注意とメジャーのボールやマウンドに慣れ、移動距離などの環境に馴染めば、日本と同様にいくつもの名場面を構築できるであろう。

私はそれよりも、同チームで40歳のイチロー選手にとても興味がある。今まで、イチロー選手に関する本を結果的にたくさん読んでいる。それらはすべて、ビジネス書としての読み方であった。いくつものイチロー語録がビジネスに結びつきやすいためか、その類の書籍が多い。ところが、今は野球選手としてのイチロー語録に新鮮さを感じる。

かつて、野茂投手が渡米するとき、ノーコンの野茂投手だからこそ、メジャーで通じる気がした。日本ではボール球を見極められ、4ボールが多くなっていたが、メジャーではフォークと速球を武器にしたノーコンで、空振りの山を築くシーンが脳裏に浮かんできた。

ところが、イチロー選手のメジャー挑戦にはまったく否定的な思いしかなかった。小柄で非力に感じるイチロー選手が、パワーあふれる大男のメジャー打者の中で、活躍できる要素がまったく感じられなかったのである。

 

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イチロー選手の安打記録は日本よりメジャーで加速している。昨年までの年間平均安打数を比べると、日本での142本に対してメジャーでは211本である。年間の試合数はメジャーの方が多いので、多くなるのは当然としても、この数字は驚異的である。イチロー選手は日本よりもメジャーで加速しているのである。

イチロー選手のプレイを見ていると、いつも忍者を連想してしまう。メジャーで通算安打の記録を持つピート・ローズ氏は、安打製造機イチローに難くせをつける。ローズ氏自身は当たりのいい安打が多いことの自負で、ボテボテの内野安打やトリッキーな安打のあるイチロー選手との内容のちがいを強調する。

日米通算4千本安打達成にしても、格のちがう日本での記録は参考にならないとも言う。ところが、上記のとおりイチロー選手は、日本よりもメジャーでの進化がハッキリしている。ローズ氏の理論でいけば、イチロー選手が日本で活躍した9年間を、もしメジャーで過ごしていたとすると、今よりはるかに多い安打数になっているのではないか。

 

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イチロー選手の安打はメジャーで加速したが、松井秀喜選手のホームランは日本での勢いがメジャーで減速した。巨人時代は、日本球界を代表する長距離打者で、10年間で332本塁打を放ったが、メジャーでは175本。日本とメジャーで各10年。計507本のホームランで現役を終えた。

「メジャーでもホームランバッターでありたい」と渡米したが、メジャー移籍後は本塁打が減り、自ら「中距離バッターだ」という発言も出るようになり、巧打者に変貌した。日本最後の年に自己(年間)最高である50号を放った勇姿が懐かしい。

松井選手の境遇は、イチロー選手に比べ恵まれていた。デビューから長嶋監督にマンツーマン教育を連日受けたり、3番打者の時期には(松井選手を育てるためにと)落合、清原の両選手を4番に据えて、松井選手のプレッシャーを取り除き、打てるように配慮された。

そして、名門といわれた巨人からメジャーの名門ヤンキースへ、脂の乗り切っている時代に移籍した。

 

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日米通算4千本安打記録達成後のNHK特集番組を観ながら、イチロー選手の生の言葉を、私はボイスメモしていた。

4千本安打の間には、8千回以上悔しい思いをしている。記録達成は快楽に近い瞬間ではあるが、あくまで瞬間的なものにすぎない。

プロ野球入団後、1本も打っていない18歳の自分は「バッティングがめちゃくちゃ楽しい」と言っていた。今にして思うと、それはすごいことである。

(記録等に)向き合う度に、自分の弱さしか感じていない。なにも意識しないでスーッと通っていくことができればいいのだが。それが強さなのであろう。そして、屈しないでいたい。

イチロー選手のバットを握る手の位置について、からだは前に出ているのにグリップは後ろで、巧みなバットコントロールをしている。今も変わらず自分の思い通りに打球を飛ばすことができる証である。

 

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打撃のフォームに最終的な形はない。自分のぼんやりとした理想に近づく一番の方法は遠回りをすること。近道はないのである。試合前に同じものを食べ続けることは、ありったけ(ふだんのまま)の自分で向かいたいなと思う。

毎日の精密な準備については、準備を怠りたいと思うことがある。しかし、それをすると、自分を支えてきた自分が崩壊してしまう。だからこそ、毎日欠かさずに続けているのである。

年齢によって出てくる風味を楽しもう。歳を認めつつ前に進もう、というスタンス。感触、手ごたえがあるのかないのか。それによって未来がちがってくる。自分の持っている最大の技術を活かす。自分には、まだまだ苦しみが足りない。苦しみが十分になったら辞める。

なにかを達成したから辞めるというのはない。まだ苦しめるということは、やれることがたくさんあると思っている。アウトプットをしなければインプットは成り立たない。

現在、名門ヤンキースに身を置き、控え出場も余儀なくされている40歳のイチロー選手。その言葉の裏に、ますますの重みを感じてならない。