“3秒、5秒ルール”が存在していることを最近知っておどろいた。
少し前のこと、自分で料理をして食材を床に落としてしまったが、もったいないからと拾って調理した。こういうことは恥ずかしいことであり、人にもいえないのであるが、うちの奥さんに言ってみたところ、<大丈夫よそれは「3秒ルール」といって、みんなやっていることだから>との答えが返ってきた。
そんなルールがいつのまにあったのか。私はポカンとして考えた。もし、あるとしても数十年にわたり妻の手料理を食べてきた私は、数多く<落とした食材>を口にしてきた、ということでもある。ああ、訊かねばよかった。後悔の気持ちさえ芽生えてきた。
Wikipedia等でネット検索したところ、“3秒ルール”とはバスケットボールの用語であるらしい。ペイントエリアと呼ばれる制限区域で、オフェンス側のプレイヤーは3秒を超えてとどまることは出来ない、というものなのだ。
食品の落下に関しては、“5秒ルール”がよく使われるようであるが、様々なバリエーションで、“3秒ルール”、“10秒ルール”、“15秒ルール”と地域によってばらつきがあるらしい。
そして、おどろくことなかれ。日本だけでなく北アメリカからイギリスまで、世界的規模で認知されているルールだという。
さて、“5秒ルール”といえば、ピンとくることがある。プロレスの反則技が正式に認められる時間が5秒未満のため、たしかそう呼ばれていたと思う。
もっともプロレスに関しては、反則が売り物になり、凶器などを堂々と使い、観客やテレビの前のファンたちにはハッキリ見えるのに、レフェリーだけがまったくわからず、ファンはやきもきさせられる。かくいう私も相当ひっかかって熱い応援を繰り返した。
反則の話ついでで、先般の日本シリーズ最終戦で、阪神の西岡選手が守備妨害を行ったとして、その瞬間に敗退が決まった。後日談で、西岡選手はそれを意図的に行ったことを認めた。打った瞬間にダブルプレーを意識したため、なんとか逃れる術としてしかけたようだ。このコメントを読んだときも、即座にプロレスの“5秒ルール”が頭をよぎった。
食品落下のこのルールは、クッキーのような嗜好品によく用いられ、<地面に落ちたとしても5秒以内なら悪い菌に感染しない>とのことである。例えば友人にキャンディーを渡すとき誤って落とした場合、気まずい雰囲気が流れるが、それを拾い“5秒ルール”を宣言することで、何事もなかったかの如く済ませることが出来る。
そして、これは迷信ではなく、科学的根拠が実証さたルールとして、全世界の共通認識だったようである。
イギリスのアストン大学で、微生物学のアンソニー・ヒルトン教授率いる研究チームが、<5秒という時間は食べ物の安全性を左右する>という事を実証した。大腸菌と黄色ブトウ球菌が、どのようにして地面から食べ物に移動するのかを、調査したのだという。
実験では様々な屋内の床(カーペットやプラスチック、タイルなど)に、トーストやパスタ、クッキー、ハム、ドライフルーツなど(ベタベタするデザートは含まない)を落とし、菌が付着する様子を研究。
その結果、「時間は、床の表面から食べ物へバクテリアが移動する重要な要因である」ことを実証した。食べ物が床で過ごした時間が、どの程度バクテリアの付着に影響するかということであるが、床の種類によりこの法則はかなり変わるようだ。
カーペットに落ちた食べ物はバクテリアが着きにくい傾向にあり、フローリングに落ちた食べ物はバクテリアが着きやすく、5秒以上は本当に止めた方が良いらしい。
当然のこととして、ベタベタした食べ物は論外とのことである。