滅茶苦茶でごじゃりまする
コロナのせいか、この1年はとても早く感じる。普段でも大人になると、子どものころより時間がたつのは早いのであるが。
そもそも人の感じる時間の長さは年齢と反比例的な関係にあるようで、同じ1年でも年を取るほど短く感じるということらしい。
さて、令和2(2020)年の出生数は、前年より2万5917人減の87万2683人で過去最少を更新。
かの東京オリンピックを翌年にひかえた昭和38(1963)年との比較では、高度成長真っ盛りの日本は元気いっぱいだった。第1次ベビーブームは終わっていても、166万人の赤ちゃんが生まれている。
昭和のあの頃の活気はすごかったが、今よりのどかな部分も多かった。漫才師で喜劇俳優の花菱アチャコさんの得意ネタ「滅茶苦茶(めちゃくちゃ)でごじゃりまするがな」が思わず浮かんでくる。
戦前、横山エンタツさんとのコンビで(今に続く)“しゃべくり漫才”の原型をつくったといわれる。
「早慶戦を見て分からんことがある。早慶の相手はどこでした?」。早稲田と慶応の試合を観戦したというボケ役がつぶやく。ふたりの十八番である東京六大学野球のネタである。
「事務所が参加者を幅広く募っていると聞いていて、募集という認識ではなかった」。こちらは、「桜を見る会」の参加者が急増した理由を問われたときのギャグ...もとい、安倍晋三前首相の言葉であった。
前首相の答弁は以前から“ご飯論法”と批判されてきたという。「朝ご飯は食べていないが、パンは食べた」とはぐらかすように・・・。
ネット上では、「危ないが危険という認識ではない」や「馬から落ちたが落馬したという認識ではない」などの粋な返しのギャグが次々と続いたらしい。
会社員の犬飼淳さんが国会答弁を交通信号に見立てて分析したという。
質問にきちんと答えたら「青」、背景や経緯の説明は「黄」、質問と無関係な答弁や論点のすり替えは「赤」といったようにである。答弁内容を直感的に視覚化するとともに、「信号無視話法」という呼び名も生まれた。
さて、菅義偉現首相も負けていない。「(長男は)今もう40(歳)ぐらいですよ。私は普段ほとんど会ってないですよ。私の長男と結びつけるちゅうのは、いくらなんでもおかしいんじゃないでしょうか。私、完全に別人格ですからね、もう」。
「週刊文春」の記事に端を発したあの「菅首相長男 高級官僚を違法接待」における答弁であった。
上述のアチャコさんではないが、思わず口ずさんでしまいそうだ。<まさに滅茶苦茶でごじゃりまするがな>と。