日日平安part2

日常を思うままに語り、見たままに写真を撮ったりしています。

口先がうまくても真心のない

 

私の好きな俳優のジャック・ニコルソンさんは、米映画『アバウト・シュミット』(2002年)にて、妻に先立たれ一人娘も慌ただしく嫁いでしまった父親の孤独をすばらしく演じていた。

<歴史の中でわれわれはとても小さな存在だ。それでもせめて何かの役に立てたらと願う。だが私は一体何の役に立てるだろうか>。定年退職した男の悲哀を描いた名作にはすてきなセリフもある。

今日という日は再びなく、会った人と再び会えるとも限らない。一期一会。茶会は毎回、一生に一度と考え、客に尽くすべしとの茶道の心得だという。それは、出会いの大切さを説く言葉である

 

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当人は正しいことをしているつもりでも、周りでは不格好で滑稽に見えることがある。かつての正月遊びである福笑い。随筆家・白洲正子さんは、それを実社会にもたとえていた。

<丸い卵も切りようで四角、物は言いようで角が立つ>。口先がうまくても真心のない“巧言令色鮮し仁”は「論語」の一節だという。

「巧言令色」とは言葉を巧みに飾り、顔つきや態度をもの和らげて美しく見せること。続く「鮮(すくな)し仁」は、人間の根本の道である仁の心に欠けるの意だ。

現代語では「美しい演説はいらない」ということか。『国連気候行動サミット2019』で言ったのはグテレス事務総長である。温暖化への強い危機感からだった。

 

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開催に先立ちグテレス氏は各国首脳に、地球温暖化に対処するための“美しい演説”ではなく“具体的な計画”を用意するよう求めたそうな。

これに応えるべく日本政府も安倍晋三首相(当時)が演説し、取り組みを報告したい意向を伝えた。しかし協議の結果、国連側から断られたという。

あの嘘つきトークが事前に察知されたのかもしれないが、安倍さんの演説はグテレス氏の嫌いな“美しい演説”だったらしい。

演説は美しければいいというものではなく、問題はその中身。そして、温暖化防止への“具体的行動”が必要だ。

世界的潮流の“脱石炭”に後ろ向きで、石炭火力発電を推進している日本の首相が演壇に立って報告すれば、大ブーイングに包まれたかもしれない。

社会全体にまき散らされるフェイクニュースやフェイク情報も厄介きわまる。アメリカの前大統領も然り、自分の都合のいいことだけを強調して、反対意見や情報をフェイク扱いや不正だとわめき続けた。

反対にメモの棒読みだけで、自分の意見を主張できない日本の現首相も情けない。なにを言っても心がまったく感じられないのである。わが家にある数台のAIスピーカーの方が、よっぽど人間的で温かい会話を提供してくれる。