日日平安part2

日常を思うままに語り、見たままに写真を撮ったりしています。

聞く力と聞かない力の違いは

 

エッセイスト・阿川佐和子さんは、インタビューで相手から「話したら、自分の頭の中の整理がついた」と言われることがよくあるという。

考えをまとめるように意識して質問することはない。「ちゃんと聞いていますよ」という合図を相手の話の間にを入れ、「もっと聞きたいです」とのサインを出すことを心掛け、ひたすら聞くのだという。

そうすると、自然に相手が内に秘めた思いを話してくれるそうな。

さて、あの寅さんが東京の葛飾区役所とおぼしき役所に、佐藤蛾次郎さん演じる源公を連れ立って現れた。

玄関の脇に小さな箱を見つけると、交互に口を近づけて「あーあっ」・・・と。「みなさんの声をお聞かせ下さい」と箱には大書されていた。

「なんにもねえな」とふしぎそうな寅さんの姿が笑いを誘う。『男はつらいよ』シリーズには落語のようなシーンが多々ある。

 

f:id:tomii23:20201201141147j:plain

 

映画監督のほかに、多くのシナリオも手掛けてきた山田洋次さんは、脚本と建物の設計図の違いを述べている。

設計の完成で建物は、最終的な形がほぼ想像できる。そうでなければ人が安心して住めない。映画だと脚本が骨格でも、俳優らとの話し合いで筋が固まるとのこと。

<大勢のスタッフや俳優が顔をつき合わせて、共通したイメージを探り合っていく仕事>とするのが山田監督の映画づくりらしい。

そして監督は、スタッフらを見ながら「それは違う」と、ときたま言っていればいい・・・のだとも。

千と千尋の神隠し』に抜かれるまで、ある映画が36年間も観客動員1位だったという。1964(昭和39)年の五輪を描いた、市川崑さんが総監督の『東京オリンピック』である。

 

f:id:tomii23:20201201144707j:plain

 

初めて見たときの感動は、今も胸の奥にある。鍛えられた選手の素顔にカメラが肉薄していて、古関裕而さん作曲の行進曲にも熱くなる。

そういう作品でも公開に至るまでに横槍はあった。

従来の“記録映画”とは全く性質の異なる極めて芸術性の高い作品に仕上げたことで、「芸術か記録か」という大論争を引き起こすことになったのだ。

完成披露試写の2日前におこなわれた関係者のみの試写会では、オリンピック担当大臣の河野一郎氏が「俺にはちっともわからん」、「記録性をまったく無視したひどい映画」とのコメントで、「記録性を重視した映画をもう一本作る」とまで述べた。

コロナ禍の今も政府の感覚はこんなもので、国民によくわかることが見たり聞いたりできないようだ。そもそも“聞こう”という意識など皆無なのかもしれないが。