追い打ちをかける感性の季節
かつてアメリカで、ある実験が行われたという。メッセージに<あなたのために選びました>と書かれた飴と、<適当に選んでみました>というメッセージでの比較反応である。
どちらが甘くておいしいと感じたか。結果では“あなたのために”との飴をなめたほうが、甘くおいしく感じる傾向が強かった。
実験を行った心理学者によれば、メモにて“人の善意を感じた”ことが味に影響したとの分析であった。
気象庁では、“雨量がどれくらいだと人はどう感じるのか”を説明していた。
1時間の雨量の比較で20~30ミリは「どしゃ降り」。30~50ミリなら「バケツをひっくり返したように降る」。50~80ミリになると「滝のように降る」だ。そして、80ミリ以上だと「息苦しくなるような圧迫感がある。恐怖を感ずる」とのこと。
1977年頃の話だという。少し前に自分が指揮したオーケストラの練習を録音したものを、指揮者・カラヤンはその機器から聴いた。タクトで自分が台をたたく音まで鮮明に入っている。誰が盗み録りしたのか・・・不機嫌になった。
それでも、迫力あるその音に聴き入り表情を変えた。<これは、まったく新しい音。将来を拓く音だ>と。
カラヤンに聴かせたのはソニーが試作したデジタル録音機の音であった。この技術が世界初の快挙に繋がっていくことになる。1982年には世界で初めてコンパクトディスクプレーヤー“ソニーのCDP-101”が誕生して市販された。
この新製品の技術において、カラヤンの感性の裏打ちも“大いに役立った”ことだと思われる。
<少しの易さを願ってとどのつまりは大きな面倒の素となる>。美人画の大家・鏑木清方さんのエッセイにあった。
なぜひと手間を惜しんだのか・・・。自分にも思い当たる経験がある。悔い改めたつもりでも同じような過ちをまた犯す。
四季を1日の時間になぞらえると、秋は夕暮れどきに相当するのか。<季節も季節 これは秋>。詩人・山之口貘さんは『再会』という一編に綴った。
多くの人に共通するのだろうか。(同じような意味で)人生の秋であり、人生のたそがれ・・・ともいう。それにしてもこの7月と同様に、雨がよく降る9月である。
なにはともあれ、秋が一番感性豊かになれる季節のようだ。