日日平安part2

日常を思うままに語り、見たままに写真を撮ったりしています。

流れの先に待つのは何なのか

 

何気ない新聞記事を思い出すことがある。2019年3月、佐賀県警武雄署は住所不定、無職の男(当時44)を窃盗容疑で逮捕。男は8日午後10時45分頃、町内の女性方敷地にて無施錠の軽乗用車から約760円を盗んだ疑いだという。

女性が車に乗ろうとしたところ、男は逃走。車上荒らしの疑いを持たれたが、車内には男のものとみられる運転免許証や2000円の入った財布が残されて、あえなく逮捕となった。窃盗はよくないことだが、この犯人をなぜか憎めない。

また、大きな箱に隠れて2019年12月に日本から密出国によりレバノンに逃亡した保釈中のカルロス・ゴーン被告も、子供っぽさを感じて思わず笑ってしまった。

“日産の救世主”ともてはやされたゴーン被告の功績は、業績のV字回復のみならずファンが待望していた名車の復活もあった。スポーツカーの「フェアレディZ」である。

  

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1970年にアメリカで「ダットサン240Z」の名で発売されたフェアレディZは、米国日産の社長だった片山豊さんが開発を指揮して大ヒットを飛ばした。ブームの先駆者である片山さんは、「Zの父」と自動車ファンからも慕われた。

経営不振に陥った日産は、1995年にZの製造中止を発表。ゴーン被告がルノーから送り込まれると、すでに会社を離れていた片山さんが直談判をした。そして、名車の復活と相成った。ゴーン被告もZのファンだったのである。

さて、ゴーン被告の如く箱に隠れることなく、覆面をかぶったまま空港の入国審査を堂々と通ったことがあるという人がいた。アメリカの覆面レスラー・デストロイヤーである。母国のアメリカでは事件になってもおかしくないが、この人ならば日本で許されたとか。

力道山が空手チョップで、外国の猛者たちをなで切りにしていた時代、外国人プロレスラーは悪役だった。

 

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力道山 VS ザ・デストロイヤー」では伝説の熱戦がある。1963年5月の対決は視聴率64%にも達した。戦後の日本人の心持ちを、このヒールは見事に受け止めていたのだ。私もリアルタイムのテレビで視聴していた。この試合でデストロイヤーは空手チョップにより歯を四本折られていたとか。

<激痛手当を出せ、数日後は父親参観なんだ!>。かつての人気番組『金曜10時 うわさのチャンネル』の名シーンである。日本テレビのアナウンサーだった徳光和夫さんはデストロイヤーに4の字固めをかけられて、あおむけに倒れたまま痛くともマイクを離さなかった。

覆面からのぞく つぶらな目と団子っ鼻、愛嬌のある笑顔。あの悪役のデストロイヤーは日本のお茶の間の人気者へと変身していた。

<人生は後ろ向きにしか理解できないが、前を向いてしか生きられない>。デンマークの哲学者・キルケゴールの言葉である。時間は、ただ一つの方角へと流れている。あの時・・・と振り返ることはできても、流れの先に何が待つのかは、誰にも分からない。