日日平安part2

日常を思うままに語り、見たままに写真を撮ったりしています。

隠居には好きなことが似合う

 

通信の主役が固定電話から携帯電話に移る中、(2017年度末の時点で)固定電話の契約数は1987件だという。2000万件を割り込んだのは1971年度以来で46年ぶりだった。ピークの97年の6322万契約から約3分の1の減少である。

加入電話の全国一律(ユニバーサル)サービスは、維持費がかさみNTT東西の加入電話事業の赤字が約800億円だという。加入電話や携帯電話の利用者は現在1番号あたり月2円を負担しているとのことだ。

自分の感覚では、年配者の方が固定電話にこだわりが強いのではないかと思う。本当は必要がないのに捨てられない。今や固定電話は詐欺グループの絶好のアイテムなのに、なくては困るような錯覚をしている。

新明解国語辞典』(三省堂)によると、【隠居】とは仕事や生計の責任者であることをやめ、好きな事をして暮らすことらしいが、過去のしがらみに縛られることもある。

 

 

<ボランティア 30分で 英雄に>(黒田鐵雄さん)。一年前の“よみうり時事川柳”にあった。いろいろな事件が続くおかげで、まだ一年前だったのか、とあらためて感じる。

山口県周防大島町の親戚宅に来ていた2歳の子どもが、三日三晩を外で過ごしながら無事に保護された。どこからともなく現れた78歳の男性が、行方不明の男の子を山中から見つけ出したのだ。

その英雄は、65歳で魚屋を引退したあとに「世の中に恩返しがしたい」と、新潟県中越沖地震東日本大震災でもボランティアをしていたという。人助けが“好きなこと”だというご隠居なのである、

終戦後、外相や首相を歴任した吉田茂さんの懐刀に白洲次郎さんがいた。この方の人助けぶりもスケールが大きい。「ばか野郎!」が白洲さんの口癖の一つだった。

イギリス・ケンブリッジ大に留学した経験があり、流ちょうな英語を話した。日本の占領政策を担ったGHQ(連合国軍総司令部)の米国人らと対等に渡り合い、「唯一従順ならざる日本人」と(GHQに)いわしめた大物である。

 

 

1954年、白洲さんは雑誌にエッセイを発表している。GHQの大部分の人々が<無経験で若気の至りとでも言う様な、幼稚な理想論を丸呑みにして実行に移していった>という。

大国と勝算のない戦いに挑んだ戦前の軍部や、止められなかった自らの世代への憤りや情けなさも、強く感じていたはずだ。とはいえ、GHQが日本人を飢え死にさせないだけの食料をくれたことへの感謝も書き記した。

いつの世も時代は流れ続ける。おばあさんが川から桃太郎を拾い上げて、おじいさんと一緒に育てる。異界からやってきた子を迎え入れるには、この世の常識にしばられた壮年男女よりも、世代の離れた老人夫婦がいいようだ。

昔話のおじいさんとおばあさんは、今の世と異界を結びつける役回りらしい。その昔、<7歳までは神のうち>といわれた子どもも、まだこの世とあの世の向かいに生きる存在なのらしい。