日日平安part2

日常を思うままに語り、見たままに写真を撮ったりしています。

言葉にならないところの表現

 

食べ物を見つけ出したり敵の動きの推測などと、生存に欠かせなかった嗅覚。今では豊かな暮らしでの役割が大きい。

香りと結びつくものごとはいくつもあるだろう。新鮮で冷たい空気の正月にも、おせち料理や雑煮、初詣のお寺、書き初めの墨などといくつもの匂いがあった。

人間の鼻には約400種もの匂い検知器があるそうだ。対して、食べ物や花が放つ香りも多数の成分を含む。そして、微量の成分の違いが香りを複雑に変化させるという。

かつての流行歌『シクラメンのかほり』を聴いたとき、シクラメンの花の香りが充満している光景を頭の中に浮かべたが、国内で流通している一般的なシクラメンには“香りがない”というのが現実であった。

匂いのニュアンスを言い表すのはむずかしい。それでも、子どもは生活の中で多様な匂いを体感して育つ。今は冬の香りをじっくりと楽しみたいものだ。

 

 

以前、プロ野球DeNAの主砲・筒香選手が、野球人口減に危機感を持つという記事を読んだが、それも嗅覚のように感じた。

2010年に約1万5000だった少年野球チームが、6年後には約1万2000まで減った。「野球人口がなぜ減っているのか」。それをわかりやすく論じていた。

まずは勝利至上主義で楽しそうに野球をやっていないこと。子どもたちは指導者の顔色を見ながらプレーしていることに憂いている。

強豪チームほど結果が優先されて、勝つための練習量が増え、(ケガで)未来がつぶれてしまった子どもたちもいる。

“負ければ終わり”というトーナメント方式で、多くの大会が運営されることにも危機感を抱く。少子化が進み、中学生以下の競技人口は大幅に減少。球界全体で問題意識を共有するべき・・・とも訴えていた。

 

 

雪との縁が深い地方では、言葉が寒暖計の代わりになる時代もあったという。魚沼地方の方言で、“穏やかに寒い状態”のことは「しわら寒い」と表現。また、よく似た言い回しで「しはら寒い」は“防寒具を着てなお身震いするほどの寒さ”なのだと。

雪と暮らす人々の「わ」と「は」で異なる寒さの目盛りに、(匂いのちがいみたいな)細やかな神経を感じる。

ひな飾りの前で、幼い姉妹がおめかしをして座っている。<この写真のシャッターを押したのは 多分、お父さまだが お父さまの指に指を重ねて 同時にシャッターを押したものがいる その名は『幸福』>。

春先の匂いがするような吉野弘さんの詩『一枚の写真』である。。

古いアルバムをひらけば、幼い自分の写真を見ながらシャッターを押した父や母の表情に思いをめぐらすときもあるだろう。困ったことに思い出したいものはいつも写っていない。写真とは思い出の記録なのに、匂いだけしか感じとれないのだ。