日日平安part2

日常を思うままに語り、見たままに写真を撮ったりしています。

腰を据えない季節もよかろう

 

今週末は12月である。住まいの神奈川県はまだ暖かいので、冬を待つという気分ではない。秋の期間の断定基準があるという。それは、最後の真夏日(30度以上)から気温が一桁になるまでの間だとか。

四季の中でも、秋のスタートから終わりまでがわかりにくい。人間には余生という言葉を使われるが、生きることに余りはぜったいにないはず。秋についても、かけがえのない季節であることはたしかだ。

笑顔になれないのはどんな場合か? 『笑について』というエッセイで劇作家・岸田國士さんは書いた。それは、感情が高まり“胸がぐつと詰まる”状態なのだと。思えば“笑い”というしぐさも、その境い目が捉えにくい。

人物の真剣な表情が作品の特徴といわれるのは写真家・橋口譲二さんである。若者から老人まで様々な年代の市井の人々が風景の中にいる。そしてそこには見る人の背筋が伸びるような真面目さがある。

 

 

医師で作家の北杜夫さんは30歳代に、水産庁の調査船で船医を務めた。大西洋でマグロの生態を調べる航海である。連日、船上の食卓には“ぶ厚いトロの山”が並んだ。半世紀後には、高級なトロが取れる大西洋クロマグロは乱獲で激減。

最近は高級志向ではなく、質素を売り物にしている酒場もテレビなどで紹介される。手作りのつまみは値段別に棚に置かれ、飲み物といっしょに客が自ら運ぶセルフ形式。

フロアは省力化され、客も1時間を超える滞在はまれだ。だらだら飲むのは時間の無駄とばかりに、パッと入ってサッと飲んで出る。オフィスでも会議は短縮。立って仕事をするスタイルが広まりつつある。

伊藤忠商事は数年前から「110運動」を推進する。社内の飲み会のルールで1次会だけ。夜10時終了の意味だ。

食通の作家・池波正太郎さんは、すし店でのマナーとして「トロばっかり食べているやつも駄目」と記した。仕入れ値が高く、利幅の薄いトロを供す店主への配慮からである。

 

 

旅先などで商店街にシャッターが目立つようになったのは今さらではない。今は、ショッピングセンターの経営が曲がり角を迎えているらしい。昨年は、テナントの新規出店数が1年で3割減り、退店数を下回る“純減”傾向が続いている。

古い施設を中心に、既存の衣料テナントなどの退店跡地を埋められない“歯抜け”事例が目立つのである。全テナントの2割を占める衣料の落ち込みも激しいという。近年、家計の支出は食やサービス、通信費などへと流れ、衣料消費の多い若年層の人口減も影響している。

文房具店や本屋の店頭には、新年用のカレンダーや日記帳、手帳などが並び、新年らしい空気が漂っている。クリスマスを飛び越してオセチ料理の宣伝も盛んである。そのわりには、笑顔になれず楽しさも感じられない。

“みこしを据える”のは酒席、仕事とも敬遠されだしたようなので、忘年会は立ち飲みの店で今風に行ったほうが無難かもしれない。