好きこそ言い逃れの上手なれ
<また寝坊 ついに親族 死に絶える>。私の大好きな“サラリーマン川柳”にあった。寝過ごすたびに、親類の不幸があったことにして会社を休んでいたのだろう。
笑い話のようだが11年前、そのように気楽な稼業が健在だったらしい。有給の服喪休暇(忌引)を不正に取得したことで、京都市が職員42人を処分・・・とあった。
そういえば、映画やテレビでおなじみの『釣りバカ日誌』の主人公・ハマちゃんも、親族が死に絶えるくらいに会社を休み、好きで好きでたまらない釣りへ出かけていた。
詩人・川崎洋さんは九州に旅したとき、居酒屋である青年と隣り合わせた。焼いたカレイをおいしそうに食べている。それも、骨の標本にして飾れるくらいの見事な箸(はし)遣いであったそうな。
感心した川崎さんは、『カレイ』という詩を書いた。<きみ きれいに食べるね/と声を掛ければ/カレ こちらも見ずに/はいネコが月謝払って/魚の食べ方ば習いにきよります>と。
“釣りバカ”のハマちゃんも魚の食べ方が上手かったようだ。ある食堂でスーさんとハマちゃんが向かい合わせで昼食をとっていた。ハマちゃんはスーさんに言った。「魚はきれいに食べてあげないと(魚が)かわいそうだ。僕が食べてあげるよ」。
スーさんとハマちゃんの初めての出会いのシーンである。そういえば、ハマちゃんの妻のみち子さんとの出会いも、魚の食べ方にまつわるエピソードだったと記憶している。
上司に日ごろ、<頑張れよ 無理をするなよ 休むなよ>と声音やさしくこき使われる。おじさんもおばさんも死なせずにきた人にとっては、すんなり嘘の通る職場は別世界。
<何故だろう 私がいないと うまくいく>という句もサラリーマン川柳の秀作集にはある。真面目だけでも、影が薄くなるかもしれぬ。
長く生きていればいろいろあるのが人生。それでも、宇宙のスケールからはホンの一瞬にも満たない時間かもしれない。
山あいでは満天の星が明るい。そしてその数の密度にもおどろく。星同士が衝突しないのかと心配にもなる。しかし、星と星の混雑度は<太平洋にスイカが3個程度>なのらしい。
宇宙は気が遠くなるほど広い。数多い星にもそれぞれの一生がある。<人生はあっという間だった>。そう言い残して逝った人は多いらしい。数々の患者を看取った医師が、なにかに書いていた。