日日平安part2

日常を思うままに語り、見たままに写真を撮ったりしています。

枷という名のおいしい隠し味

 

ロケット博士・糸川英夫さんはシステムを称して、米国の人気テレビドラマ『スパイ大作戦』のようなものと著書に書いた。スペシャリストチームが、数々の難関をクリアする物語だ。

昔から、少年たちのヒーローは完全無欠ではない。<いかなる困難、危険も越えて少年ジェットは今日も行く>。月光仮面の少しあと、テレビドラマにあったナレーションである。

ウルトラマンが戦える制限時間は3分。スーパーマンは苦手な鉛(なまり)を利用され、悪者たちに苦しめられる。多くの枷の中でもがいて勝ち取るから、視聴者たちは手に汗を握る。

フジテレビの“月9ドラマ" の代表格といえる『東京ラブストーリー』が再放送をされ、録画して観ている。1991年に放送。平均視聴率は22.9%。最終回には32.9%の視聴率を稼いだ。

今となにかがちがう。まず感じたのは、若者たちがスマホを持っていないこと。“携帯電話が存在しない時代”なればこその枷(かせ)がとてもおもしろい。

 

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デートの待ち合わせ場所へ向かうカップル。間に合わない事情が生じる。しかし、そのことを連絡できない。なぜならば、携帯もLINEもメールもない時代だから。今ならお互いの外出先からかんたんに連絡がとれる。携帯電話がないからこその重要な枷も、今はまったく役に立たない。

<惚れ合った男女がかんたんに結びつかず、いくつもの困難や枷を乗り越えていく。観客だけがおたがいの気持ちをわかっているが、当のカップルは鈍感すぎて(観客は)嘆く。「さっさとなんとかしろ」と躍起になるが、カップルの誤解、ケンカ、恋敵の出現などで思うように物語が進まない>。

恋愛ものはとくに“すれ違い”のハラハラドキドキが視聴者を釘付けにする。元々、メロドラマは、音楽の伴奏が入る娯楽的な大衆演劇であったが、感傷的な内容や衝撃的な内容のドラマがそう呼ばれるようになってきた。

 

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有名な『冬のソナタ』では携帯電話が存在していた。それでも“すれ違い”の場面はものすごく多かった。交通事故、記憶喪失、意図的な精神科治療、記憶の植え替えなどと、作品作りでタブーとされる偶然の連続もあるのだが、枷の使い方がとてもおもしろかった。

隠された過去として、出生の秘密や“親の代”の人間関係、そして家柄など。限りなくヒロインを愛する恋敵(こいがたき)の使い方もうまく、枷のオンパレードであった。

半沢直樹水戸黄門などの“勧善懲悪モノ”では、はらわたが煮えくり返るような悪党が必要不可欠である。その中でも、時間的な枷、状況的な枷、精神的な枷などの使い方がドラマの味を生かしている。

ドラマだけではなく、どんなジャンルにも枷が必要だと感じる。現実の社会も、枷があるから自分を奮い立たせ、伸ばせるることができているのではないだろうか。それは自分の体験でもあるのだが・・・。