日日平安part2

日常を思うままに語り、見たままに写真を撮ったりしています。

宮崎駿監督から学ぶ ある流儀

 

釣り人には短気が多いらしい。以前、釣り好きの人からその理由をお聞きしたことがある。釣りという作業は、やることがあまりにも多いとのこと。釣り糸を垂らしてウキを、注視し続けるときも、気長にかまえていることはないらしい。私みたいな呑気者には向かない趣味のようだ。

<大事なことはたいてい面倒くさい>。宮崎駿監督の言葉である。あれほどまでに緻密な仕事をされているのに、(テレビの特集番組では)煙草を吸いながら「めんどくさい」の連発であった。

どうやら創作中は頻繁に出てくる言葉で、頭の中に、「面倒くさい」が駆け巡っているようである。

宮崎監督は、脚本なしでの制作が特徴である。準備段階でイメージボードを大量に描き、作品の構想を練り、絵コンテと同時進行で作品を制作していく手法なのだ。テーマについても、創りながら見つける。

 

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宮崎監督が高校生のとき、東映動画白蛇伝』を観て感動。アニメーションに関心を持ったという。そしてデッサンを独学で学び、ポール・セザンヌのような印象派に影響された。

1971年、高畑勲さん、小田部羊一さんと東映動画を退社。『長くつ下のピッピ』を制作するための移籍だったが、原作者の許諾を得られず立ち消えになった。

その後、宮崎監督と高畑監督は(視聴率が低かった)TVアニメ『ルパン三世』の演出の仕事を引き受けた。

2013年に、アニメーション映画『風立ちぬ』を公開したが、同年9月1日に長編映画の製作から引退した。

風立ちぬ』もそうであったが、『魔女の宅急便』や『風の谷のナウシカ』なども、宮崎監督の作品は空を飛ぶシーンが多い。

 

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宮崎監督が描く空は、今の季節というより澄み渡った秋空に感じられる。<心の翼はいつでも持てる>という想いを、宮崎監督は空を飛ぶ場面で教えてくれているようだ。また、<世界は生きるに値する所で、美しいものが必ずある所だ>とも。

荒井由実さんの『ひこうき雲』や中島みゆきさんの『この空を飛べたら』などがBGMに使われ、宮崎アニメの青空はどんどん広がるようだ。

2017年2月、宮崎監督は長編映画制作に復帰すると発表。事実上の引退撤回である。また、監督にとって“めんどくさい”あの作業が始まるので、とても楽しみである。

2018年4月5日に、パクさんこと高畑勲監督が亡くなられた。5月15日のお別れ会は東京・三鷹の森ジブリ美術館で営まれた。 出席した宮崎監督が開会の辞を読み上げた。

<1963年、パクさんが27歳、僕が22歳の時、僕らは初めて出会いました。初めて言葉をかわした日のことを今でもよく覚えています。たそがれ時のバス停で雨上がりの中、1人の青年が近づいてきた。それがパクさんに出会った瞬間だった。55年前のことなのに、なんではっきり覚えているのだろう・・・>。

偉大なふたりの出会いを祝福する“雨上がりの空”が浮かんでくる。きっと澄んでいたのだろう・・・な、と。