日日平安part2

日常を思うままに語り、見たままに写真を撮ったりしています。

喫煙シーンにはイカした音楽

 

昔の映画は喫煙のシーンが多かった。邦画では、石原裕次郎さんの“くわえ煙草”がカッコいいと、当時の若者にウケたという。年代差はあるが、女性でカッコよく吸うとの評判は、桃井かおりさんだったろうか。

1966年制作のフランス映画『男と女』で、主人公の男女は14シーンでたばこに火をつけたという。エッセイスト・阿奈井文彦さんが著書に書いておられた。

この映画の主題曲はフランシス・レイさんが担当で、憶えやすく口ずさめる曲である。喫煙シーンにもよくお似合いであった。

 

2099

 

くわえ煙草といえば、フランスの人気俳優アラン・ドロンさんも素敵であった。ご自身の出世作ともいえる『太陽がいっぱい』は、1960年のフランスとイタリアの合作映画である。

物語では、金持ちの友人を殺害して友人になりすますため、くわえ煙草でサインの練習をする場面がある。そこでの煙草が(すばらしい小道具としての)威力を発揮している。監督がルネ・クレマンさんで、哀愁たっぷりの音楽はニーノ・ロータさんによるものだ。

若く美しい殺人犯で、策略家を演じるドロンさんも最高であった。一番好きな映画音楽はなにか? と問われたら、私は即答できる。

それは、『太陽がいっぱい』だ・・と。

 

2100

 

向田邦子さんの短編『かわうそ』という作品にも、冒頭から煙草が登場して、意味を持つ小道具へと向かう。短くても読み応えがある作品である。

すでにテレビドラマの脚本家として実績のあった向田邦子さんが、『花の名前』など3つの短編で直木賞に選ばれた。

1980年の選考会では授賞を見送り、小説家としての実力を見極めようという声も出たという。しかし、選考委員の山口瞳さんが強硬に異議を唱えた。

向田邦子はもう、51歳なんですよ。そんなに長くは生きられないんですよ…」と。
それで風向きが変わり、授賞が決まった。

とはいえ、満50歳といえば働き盛りのはず。山口さんが授賞見送り派を説得する方便として口にした年齢であったが、反対が出なかったのは(山口さんの)迫力だったのだろう。

運命とは過酷なものである。奇しくも山口さんが唱えた51歳が、向田さんの享年となる。その翌年8月に、向田さんは旅先の台湾で航空機事故に遭い、亡くなった。

もっともっと向田さんの作品を観たかった。そして、読みたかった。