日日平安part2

日常を思うままに語り、見たままに写真を撮ったりしています。

会話を楽しむことは同じでも

 

ついこの間のことだと思っていたが、若者を中心によく使われた“KY式日本語”も10年前の話らしい。代表的な「KY」(空気読めない)などと今 口走ったら、若者たちから口をきいてもらえなくなるだろう。

当時は“縮めに縮めた略語”を収めたミニ辞典も登場したようで、「3M」(マジでもう無理)、「ND」(人間として、どうよ)、「CB」(超微妙)などが網羅されている。

電車の中で若い女性のグループから、「DOね」とささやく声が聞こえれば、「ダサいオヤジ」なのか、「ダンディーなおじさま」なのかわかりにくいと、ミニ辞典で調べた年輩者がいたかもしれない。私の場合は、調べずとも答えはすぐにわかるのだが。

その対極で、昔の人はしばしば長文の“無駄口ことば”を用いたらしい。長所が見つからないときは「貧乏稲荷で取りえ(鳥居)がない」とか、簡素な祝い事は「座敷のちり取りで内輪(団扇(うちわ))で済ます」などと。

 

2027

 

<饅頭の真価は美味にあり。その化学的成分のごときは饅頭を味わうものの問うを要せざるところなり>。夏目漱石さんは著書『文学論』で俳句を饅頭に例えた。俳句を味わうのに成分論議(難解な解釈)は無用、うまければいいのだ、と。

俳句に限らず、日常の敬語も“美味”という(耳にした時の)心地よさにあるのかもしれない。

痛勤電車に疲労宴などと、誤字や誤植にはときになるほどと思わせるものがある。“失敗は成功の墓”もそうだろう。わが家のリビングのテレビには画面の縁に「世界の亀山ブランド」のラベルが貼られている。シャープの名を世界に轟かせた三重県・亀山工場製である。

美味であったはずのラベルを見るたびに、身売りをするハメになったシャープの成功が墓に入るような気分になってしかたがない。それも、製品の寿命がまだまだ尽きないうちに・・・なのである。

 

2028

 

評論家・大宅壮一さんは虚業家、恐妻、一億総白痴化などと、独特の言語感覚で世相を斬り、多くの造語を遺した。「口コミ」もその一つである。

その口コミという言葉の語意は随分変わってきているようだ。今風に記すならLINEやツイッターなどSNSを使った情報の拡散なのであろうか。

観光、映画からコンビニの新製品まで、あちらこちらで<ヒットの鍵は口コミ>という文言が飛び交う。かつて「時代を映す鏡」と称された雑誌の売り上げ減も著しい。

一億総評論家が情報交換や検索に明け暮れる現代を、大宅さんなら、どんな言葉を用いて喝破するのだろうか。