日日平安part2

日常を思うままに語り、見たままに写真を撮ったりしています。

「はやりもの」は「すたりもの」

 

ワープロやパソコンが普及する前、「かなタイプライター」を買って使っていた。“ひらがな”と“アルファベット”しか印刷できなかったが、キーを打つ感覚がとてもうれしかった。

大正琴。日本で発明されたこの楽器はタイプライターがヒントで生まれた。右手のピックで弦をはじき、左手でタイプライターのようなボタンの鍵盤を押さえて音程を調節する。

大正琴は(その名のとおり)1912年(大正元年)に誕生。音楽家・森田吾郎さんが演奏旅行で欧米へ出かけた際、日本に当時なかったタイプライターを見て、帰国後にその機構を応用して作られた。

森田さんは、高価で演奏が難しいピアノやバイオリンなどに代わる庶民の楽器を作りたい、との思いが前からあった。楽譜が読めない人へと、ボタンに洋数字を振り、専用の楽譜“数字譜”も作った。

当初は楽器として評価されず、玩具店で売られていた。後に大正天皇が買い求められて、人気が急上昇した。

 

1979

 

大正、昭和、平成と時は経たが、大正琴はまだまだ健在である。

かたや、小中高の教科書が徐々に紙離れしていくらしい。一年前に文部科学省は、現行の紙の教科書を基本としつつ、タブレット端末などによる「デジタル教科書」の併用を認める、と発表。デジタル教科書は2020年度から導入できるようになる見通しだ。

息の長い商品・“ボンド”も、教科書の製本現場で活躍したのだろうか。ボンドの品名は、「つなぐ」という意味の英語(bond)が由来らしい。当初は電話帳や文庫本などの製本用だった。ページを背表紙に接着できるので、針金や糸で束ねるよりも容易に製本できた。

1870年創立のコニシは、薬の商いを祖業としていたが、戦前に化学商社へと発展した。将来性のある自社製品を開発しようと、合成樹脂の研究を重ねた。その成果で(終戦後の)1952年、画期的な接着剤を生み出した。

 

1980

 

ボンドの用途は広がり、建具や家具作りでも支持された。その以前“蒸した米を練ったのり”が使われていたが、「ボンドを混ぜてほしい」と売り込んだ。職人からは「米を練る手間が省ける」と好評で、最終的にボンドだけになった。

色や容量、接着力の強さや速乾性など特徴の違いで、ボンドは約6000種類の製品がある。65年間、ものを「つなぐ」ことで新たな価値を生み出したこの商品。どんどん進化している。

「はやりものは、すたりもの」という商品もあるようだ。数年前まで、11月25日は「ハイビジョンの日」と騒がれていたようだが、今年はまったく聞いていない。テレビの走査線(横に走る線)がハイビジョンは1125本。それに掛けての日らしい。

通産省(現経産省)が定めた「ハイビジョンの日」は、9対16という(画面の)縦横比から9月16日だとも。

詳しくないが、今やインターネット、CSでハイビジョンの4倍の情報量を持つ4K放送が始まっているとか。すでに“ハイビジョン”なる言葉さえ死語になってしまったのだろうか。