テレビ新時代幕開けのはずが
<闇市ぐらい撮影に金がかかるものはない>と言ったのは、演出家・鴨下信一さんだという。明治の鹿鳴館や江戸の大奥でもなく、闇市が映画やドラマのセットで最も高くつくそうだ。
たばこ巻き器、魚の皮の革靴、鉄兜をつぶした鍋などを撮影用につくればとても高価だからだ。今の技術と物量をもってしても再現のむずかしい不思議な場所が闇市。
<不自由を常と思へば不足なし>。石原裕次郎さんが小学生の頃に書いた習字だという。10歳で終戦を迎え、物不足の辛抱を半紙に綴った少年も、伸びやかな言動で高度成長を駆け上る。
人気はもちろん、人生が時代の波に重なる意味でも、昭和を代表する映画スターである。裕次郎さんは1963年に石原プロモーションを設立し映画製作を続けたが、1970年代以降は映画から離れ『太陽にほえろ!』、『大都会』、『西部警察』などテレビドラマで活躍した。
昨年4月に始めたインターネット放送局「アベマTV」が好調で、スマートフォンやタブレットのアプリダウンロード数が1700万を超えたという。
スマホ・タブレットに最適化したテレビ放送であり、ドラマ、スポーツ、ニュースなど20チャンネル以上あり、使い勝手もよいとのこと。
今や“1日あたりのメディア接触時間比率”が、男性15歳以上、20代、30代の各層と、女性も15歳以上と20代の層では携帯電話がテレビを上まわる。
特に男性の15歳~19歳層では携帯電話45.5%に対してテレビ24.8%、男性20代でもそれぞれ31.5%、24.1%となっている。全世代でみたときのテレビの接触時間比率もじわじわ下がっているとのこと。
テレビの接触時間比率は2006~10年に50%前後で安定していたが、11年に46.1%と(前年から)急減した。大震災でニュースの需要は高まったはずが、逆に大きく落ち込んだ。
2011年は、地上波テレビのアナログ放送が終了した。09年から11年にかけて携帯電話の接触時間比率は5.6%から9.2%と急増。アナログテレビが使えなくなって見る機会が減った上に、高性能スマホの普及が追い打ちをかけたのだ。
その比率は12年から14年にかけて、45.9%から40.7%にさらに急減。12年は(iPadミニや7インチの)小型で手軽なタブレットも登場した。
それまで調査項目さえなかったタブレットの接触時間比率が、調査開始の14年にいきなり4.7%を占めたらしい。アベマTVはこうした背景の上に現れた。
テレビ新時代の幕開けのはずが、デジタル化完了の年にテレビの退潮が始まり、デジアナ変換が終わった1年後にはネット配信などのサービスが支持を広げた。
私の場合、テレビの接触時間比率は高いが、ネット配信の“音と映像”視聴が主だ。アマゾンの「Fire TV Stick」という便利なオモチャをテレビに挿し、視聴放題の映像や音楽、YouTubeなどを“大画面と迫力音”で楽しんでいる。
テレビ番組はお気に入りを厳選録画。テレビ放送をリアルタイムで観る比率が激減している。
今週のお題「ちょっとコワい話」