牧水さん酒話と今の天気予報
1885年8月24日、宮崎県に生まれた歌人・若山牧水さんは、旅と酒をこよなく愛した。その酒量は並大抵のものでないという。
大正の末、九州へ51日間の長旅をした。その紀行文に記録されている。
朝の4合から始まり、<一日平均2升5合に見つもり、この旅の間に一人して約1石3斗を飲んで来た>。呑む量に石(約180.4リットル)の単位を用いる人はめったにいない。
肝臓を患った牧水さんは、九州旅行の3年後に43歳で亡くなった。
その呑みっぷりで、体内のアルコールが防腐剤となって遺体が傷まなかった、という伝説話まであるとか。
牧水さんは、大好きなお酒の作品も数多いようだ。
<かんがへて 飲みはじめたる 一合の 二合の酒の 夏のゆふぐれ>。
<秋かぜや 日本(やまと)の国の 稲の穂の 酒のあぢは ひ日にまさり来れ>。
牧水さんの足元にも及ばぬが、酒好きのわが身にも染みわたる歌である。
今の季節にちょうどよい。
8月もあと一週間。残暑は厳しくとも、確実に秋が待機している気配がある。
台風とのからみもあり、天気もめまぐるしく変わる。
<東京地方、きょうは天気が変わりやすく午後から夜にかけて時々雨が降る見込み>。
ラジオのアナウンスに拍手が起きたそうだ。1945年8月22日に天気予報が復活した瞬間である。
戦時中、軍事機密として天気予報の発表が禁じられたという。
灯火管制の解除による明るい夜とともに、天気予報の復活は(終戦で)平和の象徴になった。
<台風等の位置、示度、進行方向及び速度等は表さざるものとす>。
軍の管制下では暴風警報の内容さえ制限されたという。
隔世の感とでもいうか、昨夏、本格運用が始まった「ひまわり8号」は、最先端の観測システムを搭載。500メートル四方の解像度で台風や雨雲をとらえる。カラー撮影は世界初だ。
私もスマホ、iPadで雨雲レーダーを大いに利用させていただいている。
刻々と変わる雲の動きが、手の中で随時に確認できて助けられる。
ひまわり8号は静止気象衛星である。これまでのひまわりに比べて観測バンド数が大幅に増えたため「静止地球環境観測衛星」とも呼ばれる。
2016年に打ち上げの ひまわり9号は、軌道上で待機し、2022年からひまわり8号と交代して2028年まで運用される予定だという。
システムの進化で、その用途も拡大していく。
日本及び東アジア・西太平洋域内の各国における天気予報や台風・集中豪雨、気候変動などの監視・予測、船舶や航空機の運航の安全確保、地球環境の監視を目的とするとのこと。
天気予報の進化はうれしく、個人の持つ端末でも瞬時に確認できるようになった。
欲を出したらきりがないのだろうが、(今も拡大している)自然災害を事前に退避できるような防衛システムが出てきてくれないものだろうか。
大災害の前で、人間はあまりにも無防備で、どんどん小さく見えてくる。