日日平安part2

日常を思うままに語り、見たままに写真を撮ったりしています。

ネットの自己修正メカニズム

 

インターネットの歴史スタートは1950年代、コンピュータの発展と共に始まったという。時を経て、1993年での双方向電気通信でやり取りされた情報総量の中、インターネットによるものはわずかに1%。それが2000年になると51%に成長し、2007年は97%以上の情報がインターネット経由でやり取りされている。

そのインターネットにも分裂騒ぎがあった。アメリカのNSA(国家安全保障局)による大規模な通信傍受が、インターネットのバルカン化? と懸念され、世界に波紋を広げた。

第1次世界大戦後、東欧のバルカン半島諸国は、敵対する小国に分割されていった。ネットでも一種の“国境”が出現するため、「バルカン化」と同様の現象が起きかねないのでは、との危惧であった。

 

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具体的には、ネットへ一種の国境が設けられ、地域ごとや国ごとのミニ・インターネットに分裂してしまう、ということである。世界中の政府が自国民のデータ保護と、NSAのスパイ能力制限のため、<自国のネットを囲い込んで閉じ込める>というリスクなのだ。

<ネットは最も開かれた通信の場であり、世界経済を牽引するエンジン>という観点のなか、バルカン化が進めば世界経済は大きな打撃を受ける、との警告もイギリスで報道された。

ネットの囲い込みは中国など一部の強権国家ではすでに始まっているが、<こうした動きが民主国家の間にも広がる兆しが出てきた>などと問題視している。

 

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欧州は独自のメールサービスやデータセンターを持つべき、という声が強まり、ブラジルでは、グーグルやフェイスブックなどの外国ネット企業に対し、自国民の情報はブラジル国内に保存するよう義務づける法案が提出された。

この動きに強い危機感を抱くのは、他ならぬアメリカなのである。自由で開かれたネットを作り上げ、ネットを牛耳ってきたアメリカは、政治的、経済的にも(グローバルなネットの)最大受益者であるからだ。

反面、アメリカ主導のネット秩序を覆したい中国やロシアは、チャンスととらえほくそ笑んでいるのかもしれない。

 

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男はつらいよ』の寅さんに「相変わらず馬鹿か?」と言われると、おそらく頬がゆるむ。ツンとすましたインテリに「いまも愚かなままなの?」と言われたら腹が立つ。文面で報道される“暴言”の多くは、どういう人柄の人がどんな言い方をしたのか、読むだけでは想像の及ばないことが多い。

インターネット上に誤った情報が、故意や無意識のうちに流されると、瞬く間に世界中へ広がり大きな波紋を広げる。それは、野原や森林に広がる火事の如くということで、デジタル・ワイルドファイア(digital wildfire)と表現されることがある。

数年前、ロシアの内相を装った人物がツイッターに、某国の大統領が死亡もしくは負傷した可能性がある、との偽情報を流したことで、原油価格が跳ね上がるという騒動に発展した。ロシア当局があわてて否定したため、ほどなく騒ぎはが収まったが、ソーシャルメディアの影響力の大きさを改めて示した。

1938年にアメリカで起きた“宇宙戦争”をめぐる事件は、<新メディアが偽りの情報を広げ、パニックを引き起こすケース>として有名だ。アメリカのラジオ局がイギリスの作家H・G・ウェルズさんのSF小説『宇宙戦争』を現実のニュース放送のような形で放送したところ、多くの市民は火星人が本当にアメリカを攻めてきたと勘違いし、パニック状態になったというのだ。

 

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今、ラジオに人々が惑わされることは考えにくいであろう。しかし、新しいメディアであるネットでは、情報が拡散する範囲やスピードが、ラジオとはけた違いなのだ。思いもよらぬ深刻な結果を招くリスクがつねにある。

その一方、<ネットには間違いを正す自己修正メカニズムがある>というのが興味深い。誤った情報が流れれば、多くのネットユーザーが「それはウソだ」と指摘して、速やかに訂正されていくことも現実にある。

それは、上述のデジタル・ワイルドファイアに対処する、最も効果的な方法のひとつといえそうだ。間違いを正すためには、また同じソーシャルメディアを使うということになる。
どのメディアにも光と影の部分がある。かつてないほどの巨大な影響力を持つネットを人類はどう使いこなしていくのか。<その知恵を試されているとき>ともいえそうだ。

<いい人と歩けば祭り。悪い人と歩けば修業>。最後の瞽女小林ハルさんの残した言葉である。ネットにもいい人と悪い人が混在する。祭りにするための修行は大事であろう。