日日平安part2

日常を思うままに語り、見たままに写真を撮ったりしています。

寿命より先に逝って困るモノ

 

単身赴任の長い長男とは、たまにLINEのやりとりのみで6年も会っていない。
先日電話があり、赴任先が名古屋に変わるとのこと。転居先の書類提出で、私の印鑑証明が必要なのだという。

なんだか声がちがうように感じた。二男とはよく会っているが、もし長男のなりすましである場合<詐欺電話にダマされないという自信はまったくない>と常日頃思っていた。電話を切って気がついたが、携帯電話番号もちがっていた。

すぐに長男の嫁に確認電話をいれたが、つながらなかった。
本人に再確認の連絡でもすればいいが、本人だったら“疑って悪い”などと(長年会っていない分)妙な遠慮も出てくる。

出勤中の女房に連絡をとると<私の印鑑証明が必要とはおかしい>との返答。
しばらくして、長男本人からLINEが入った。転居先管理人の勘違いだったとのことである。とにかく本人でよかったが、もし別人でも判別できなかったのはまちがいがない。

 

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昨日、興味深い新聞記事を見つけた。
4月10日午後1時頃、新潟市西区の男性宅に長男を名乗る男から、
「コンビニのトイレに1700万円の手形が入ったかばんを忘れた。会社の金なので今日中に返さなければならない」との電話があった。

男性は男の声が長男と異なることなどから不審に思い、「500万円ならある」とだまされたふりをした上で新潟県警新潟西署に通報したそうだ。
そうとはしらず、同日午後3時頃に男性宅へノコノコと現れた(詐欺容疑の)21歳の男は、待ち構えていた署員にあっけなく逮捕されたという。

今ではよくある事件のようであるが、私の感心したことは<だまされたふりをして機転をきかせ、速やかに警察へ通報した>男性の年齢が87歳であったということである。
この方のような歳の重ね方ができたら、どれほど幸せだろうかと痛感させられた。

 

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1919年(大正8年)の正月、永井荷風さんは体調のよくない日がつづき、死期の近いことを感じたという。日記には「余命いくばくもなきを知り、死後の事につきて心を労すること尠(すくな)からず」と書かれている。荷風さんが39歳のときであった。

その12年後にはおのが色欲を語り、「なほ青年の如(ごと)し。笑ふべく悲しむべく、また大(おおい)に賀すべきなり」と、人を食ったことを書いているというのだ。
荷風さんが亡くなられたのは79歳だから、寿命とは定めがたいものである。

2014年版「世界保健統計」では、日本が平均寿命の男女平均84歳で長寿世界一だという。2位以下は、アンドラ、オーストラリア、イタリア、サンマリノシンガポール、スイスが続く。

男女別の世界一では、男性がサンマリノで82歳、女性が日本で87歳。
日本の男性は平均寿命80歳で世界第8位。上位9位の国々において男性の平均寿命は80歳を超えているという。

 

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この統計から、急激に進む人口の高齢化が浮かび上がっているようだ。
ここ数十年の間に、世界は平均寿命において大きな躍進を遂げている。

2012年に生まれた子どもの世界平均寿命は、女の子で72.7歳、男の子で68.1歳となる。これは、1990年に生まれた子どもの世界平均寿命と比べて、6歳も長くなっているそうだ。

低所得国も1990年から2012年の間で大きな進歩を遂げたという。
1990年に51.2歳であった低所得国の平均寿命が、2012年には63.1歳に伸び、約9年も長くなった。それでも、低所得国の間での健康における格差は拡大している。

そして、世界には男女ともに平均寿命がいまだ55歳以下である国が9カ国あり、すべてアフリカ・サブサハラ地域の国々となっている。

 

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我々は皆、長く生きることができるようになった。しかし、長寿を享受できるかどうかは、生まれた場所に左右されるのも事実である。

どなたの作か失念しておりまするが、<寿命より貯金が先に逝っちまい>という川柳が忘れられない。最長寿の国で生きる人に共通の悩みは年金など、依然として見通しのきかない“老後”であろう。

独り暮らしの荷風さんが没したとき、預金通帳にはいまのお金にして1億6、7000万円の残高があったという。うらやましいくらいの残高であるが、「寿命と蓄え」に関してはなかなかぴったりとはいかないもののようである。