日日平安part2

日常を思うままに語り、見たままに写真を撮ったりしています。

未来の未来は今にあるはずが

 

ジャンルを問わず、海外ロケのテレビ番組を観るのは楽しい。
ロケの際、スタッフは仮払金をもらい出かけるという。そして、帰国後のアシスタント・ディレクター(AD)には、精算という大仕事が待っている。

かつて、ツワ者ADさんは、何百枚もの領収書が必要なところ1枚で済ませるため、名目は「象1頭購入。機材の運搬に使用」。
草創期の名ディレクター今野勉さんの著書『テレビの青春』で伝説が紹介されている。

 

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経理部局を“象の買い物”が通過できたかは明らかでないが、半世紀前のこととはいえ、豪快な話である。

思えば昨年、8億円借入問題で<酉(とり)の市で大きめの熊手を買った>と応じた衆議院議員がいた。人気議員さんであったが、昨年末に落選された。

今野さんの著書で“ADの鑑(かがみ)”と呼ばれた人は「精算というのは、どれだけ創作力があるかということなんだよ」と力説したとか。
象の手ならぬ、熊の手の精算における創作力はいかがであったろうか。

 

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昭和50年代のこと、放送作家・高田文夫さんとビートたけしさんは喫茶店でコーヒーゼリーを食べていた。やがて、遅れて着いたビートきよしさんは開口一番「東京じゃ喫茶店でも出すんだねェ、煮凝(にこご)り」と言ったそうだ。

もし、今の子どもたちが食卓にある煮凝りを見たら、きっとその逆で<コーヒーゼリーをおかずにしてごはんを食べている>とおどろかれることだろう。

おどろくといえば、日本生まれの“絵文字”が外国で評価を受けて、<500年後、人々は新しいアルファベットが創り出されたことを振り返るようになるだろう>と定義された。

 

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最近は、友人や家族とのやりとりはLINEがほとんどで、絵文字のことをすっかり忘れていた。時代はもう、LINEのスタンプが主流だと信じて疑わないほどであった。
その絵文字が世界に広がり、絵文字のローマ字表記「emoji」がそのまま英語として通用するようになっているとか。

イギリスのオックスフォード英語辞典も「emoji」を収録語として採用。
<電子的なコミュニケーションの場で、考えや感情を表現するために使われる小さなデジタルのイメージや図形記号>と定義し、補足説明として<語源は1990年代の日本語。「絵」を示す“e”と「文字」を示す“moji”が合体したもの>としている。

「emoji」に関するニュースも多く出たそうで、アメリカのホットドッグ販売店の店長が、<すし、弁当、ピザやアイスクリームの絵文字があるのにホットドッグにないのはおかしい>、と嘆願書で訴えたという。

 

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世界の様々な人種や民族の人たちが使うようになった「emoji」は、デジタル時代が生み出した21世紀の国際的な象形文字ともいわれている。

しかし、そのわずか1年後の現在、<LINEのスタンプが世界でどのような評価を受けているのか>にとても興味がある。
「世界のLINE登録者数は5億6000万」などと半年前の発表にあった。

私自信の体験でも、LINEのスタンプは毎日使うが、絵文字をまったく使わず、過去の遺物と化している。そもそもがメールを使う頻度が激減しているのが要因なのであるが。

<遠い過去の現象が今に結びつくこと>はわかるのであるが、<今現在や来年のことを今の現象から見つける>という作業が、この時代のスピードに追いついていないような気がしてならない。