砂浜と野生動物の運命いかに
今世紀末には海面が60センチ上昇し、日本の砂浜は最大85%が消失するという。
国立環境研究所などの研究機関が発表している。昨年、政府は温暖化の被害を軽減する「適応計画」をつくる予定だとのことであったが、その後の対策は進んでいるのだろうか。
『いい日旅立ち』の旅人が思い出づくりに枯れ木で「さよなら」と書き、『錆さびたナイフ』のマドロスは恋の亡骸(なきがら)を埋めた。古き時代の歌謡曲である。
今の時代でも、砂浜にたたずむと感傷に誘われてしまうことは多いだろう。
同研究所では10年前にも「地球温暖化が日本に与える影響」という予測データを発表していた。今世紀後半には夏の気温が4.2度上昇して、真夏日が70日も増加するという。
サクラの開花も平年より3日早まり、東京の平均気温が百年間で3度近く上昇した。逆にイロハカエデの紅葉日は、この50年間で2週間遅くなった。北海道・日高山脈のアポイ岳では常緑のハイマツやキタゴヨウなどの生育高度が上昇し、高山植物ヒダカソウが激減している。
鹿児島県・屋久島が北限だったアオウミガメは、同県本土や宮崎県でも産卵・ふ化を確認。熱帯の海に生息するテーブルサンゴの一種エンタクミドリイシが熊本・天草沖でも見つかったようだ。
昆虫では、九州、四国が北限だったナガサキアゲハが、2000年以降は関東でも確認された。
日本でも<既に温暖化が原因と見られる影響は顕在化しており、今後、悪影響の範囲が拡大したり、頻度や強度が増すことも予想される>との警告が出ている。
2008年にも、国立環境研究所を始めとする国内14機関により、温暖化影響総合予測プロジェクト報告書「地球温暖化 日本への影響・最新の科学的知見」が発表された。
水資源、森林、農業、沿岸域、健康の5分野を対象に、それぞれの影響予測が出されている。
以下は、温暖化が20年あたり約1℃のペースで進行した場合についての予測である。
- 豪雨の増加に伴う洪水の被害額が2030年に年間約1兆円に達する危険性。
- 斜面災害など土砂災害のリスク増大。
- 積雪に由来する水資源の減少により、代掻き期の農業用水が不足する可能性。
- ブナ林の大幅な減少、松枯れの増大、湿原の減少。
- 米など作物の生産適地の北上、収量の変化。
- 食糧供給に影響する危険性。
- 高潮浸水面積の増大、河川堤防の強度低下、地下水位の上昇。
- 砂浜や干潟の消滅による数兆円規模の経済損失の危険性。
- 気温上昇による熱ストレス死亡リスクの増大、大気汚染や感染症の分布への影響。
3月3日は国連の「世界野生生物の日」だという。
ケニア政府は今年、その日に合わせて押収した密猟の象牙15トンを焼却した。
ゾウ約1500頭分で、闇市場での時価総額は3000万ドル(約36億円)に上るそうだ。
ナイロビ国立公園でケニヤッタ大統領が、約3メートルの高さに積み上げた象牙に火を付けた。「密猟は、世界的な需要があるから起きている」。大統領のコメントである。象牙は宝飾品などとして人気が高く、近年も取引価格が高騰しているとのこと。
一方、豪州南東部ビクトリア州政府では2013~14年、増え過ぎた野生のコアラを「間引き」する目的で、計686匹を殺処分していたと報じた。同州ケープ・オトウェイでコアラが密集して生息し、餌となるユーカリの葉が不足して餓死するなどの問題が起きていた。そのための安楽死処分なのである。
豪州では野生のコアラの絶滅が危ぶまれており、動物愛護団体などが反発しているという。