日日平安part2

日常を思うままに語り、見たままに写真を撮ったりしています。

ナルシシズムとプライバシー

 

私の知人たちは、LINEやフェイスブックなどのプロフィル欄に載せた<“自分撮り”の写真>をこまめに更新している。調べてみると、アメリカではソーシャルメディアを利用する10代の91%が公開しているとか。

日本では、自分の写真を自分で撮ることを「自分撮り」などと言いうが、英語では、こうして撮影された写真をセルフィー(selfie)と呼ばれ、 セルフ・ポートレートの短縮語として、インターネット上で用いられ始めた。

 

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この言葉はソーシャルメディアの発達や、カメラ付きスマホの普及により広く使われるようになった。たしかに、工夫を凝らして撮られた知人の「自分撮り」の写真を眺めると、自己をいかに美しく、魅力的に、あるいは個性的に演出するか、という者もいるようだ。

インターネットの質問サイトにも、「自分撮りできれいに撮りたい」とか「自分撮りできるタイプのカメラが欲しい」とたずねている人は多い。

多くの人たちに見てもらえるソーシャルメディアは、新しい形のナルシシズム(自己愛)を呼び覚ましたし、セルフィーの広がりが時代の流れを象徴しているのかもしれない。

 

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その反面で、スマートフォンや防犯カメラで顔写真を撮られて、<写真はネット上の情報と結びつけられ、身元がたちまち割り出される>ということも起こりうる時代である。いつ、どこに、誰といたか。かんたんに知られてしまうかもしれない。

新しいタイプのプライバシー問題で、そんなリスクが年ごとに高まっているらしい。
その背景には、顔写真の特徴を分析して、誰なのかを突き止める「顔認識」の技術の進歩がある。本人の識別率は今や99%以上とまで言われているからおどろきである。

顔認識の研究は半世紀以上前に始まったが、実用化が一気に進んだのはこの10数年ほどだという。今では、防犯やテロ対策、市場調査などで広く活用されているが、一方で顔認識の普及に伴うプライバシーの侵害は今後、大きな社会問題になっていきそうである。

「グーグル・グラス」のようなメガネ型の携帯端末に顔認識の機能を加え、街中や電車などで目にした人をこっそりと撮影し、名前や所属を突き止めることも可能になるかもしれない。そんな新しい技術から自分のプライバシーや顔認識をどう守ればいいのか。

 

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国立情報学研究所・准教授の越前功(えちぜん・いさお)さんは、この分野の研究で最先端を走っているという。
越前さんが考え出した対抗策もメガネで、“プライバシー・バイザー”という。

大半の顔認識ソフトは、まず画像に人間の顔が写っているかどうかを調べる。そして、顔かどうかを判断する決め手になるのは目の周辺と鼻筋の特徴だとか。プライバシー・バイザーのLED光源は目と鼻筋の周辺にあり、この光がノイズ(雑音)になって、顔認識ソフトは混乱してしまう。そのため認識できなくなり、ソフトは「無効化」されてしまう。

ちなみに、現在の顔認識ソフトは賢くて、サングラスで目元を隠した程度では簡単に本人と見破られてしまう。そのための対策も必要なのである。

 

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越前さん開発のメガネは、プライバシー問題への関心が強い欧米で注目を集めている。
レンズの表面には特殊な物質が塗布され、これにより顔認識ソフトを混乱させることができるという。

レンズに載せる物質の面積を減らし、視界を広げること。また、デザインを洗練させること、なとど課題はいくつかあるが、開発にはメガネメーカー数社も加わり、商品化に向けているようだ。

それでも越前さんは、このメガネは<過渡期の技術>にすぎないと言う。
顔認識のソフトも進化を続けて、プライバシー・バイザーの壁を破るようなメガネ型端末の登場も予想されるからである。
もしかして、顔認識をめぐる「メガネ対メガネ」の攻防は、イタチごっこのように続くかもしれない。